建設業許可では、請負契約を結ぶ営業所ごとに、一定の資格や経験を持つ技術者を配置しなければなりません。
以前はこの技術者を「専任技術者」「専技」と呼んでいました。2024年12月13日の法改正で、この呼び方が変わりました。一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」が正式名称です。ただし実務では、今も「専任技術者」「専技」という呼び方がよく使われています。
手持ちの資格が申請業種に使えるかどうか分からない。10年以上の実務経験はあっても、当時の工事資料が残っていない。資格者の退職が決まったのに、後任が見つからない。
問われるのは、現場経験の長さだけではありません。誰を候補にするか。どのルートに当てはまるか。資格や実務経験、常勤性をどの資料で示すか。
この記事では、営業所技術者の役割から一般建設業の4つのルート、実務経験の証明までを解説します。あわせて常勤・専任の考え方と、退職時の対応も取り上げます。
営業所技術者とは
営業所技術者とは、建設工事の請負契約を行う営業所に置く技術者のことです。
見積りや工法の検討、注文者への技術的な説明を担い、請負契約を技術面から支えます。そのため各営業所には、許可業種に対応する資格か実務経験を持つ人を配置します。
本店だけで建設工事の契約を行う場合は、本店に営業所技術者を置きます。支店でも契約を行うなら、その支店にも必要となります。
経管は会社全体の経営管理を担いますが、営業所技術者は営業所ごとに置きます。会社に1人いれば足りるとは限りません。
一般建設業の営業所技術者になる4つのルート
一般建設業では、資格・学歴・技術検定・実務経験の組み合わせから、主に4つのルートを検討します。
- 申請業種に対応する国家資格等がある
- 指定学科を卒業し、必要な実務経験がある
- 技術検定の第一次検定合格後、必要な実務経験がある
- 申請業種で10年以上の実務経験がある
2023年7月1日から、技術検定の第一次検定合格者を指定学科卒業者と同等に扱う制度が始まっています。そのため、従来の「資格・指定学科・10年経験」の3ルートに加え、第一次検定合格後の実務経験も検討します。
検討の順番は、まず資格の有無を確認します。次に学歴や第一次検定、最後に10年の実務経験という流れです。
一般建設業では、まず資格を確認し、次に学歴と実務経験、それも難しい場合は10年実務経験で検討します。
ルート1|国家資格等を使う
最も準備しやすいのは、申請業種に対応する国家資格等を持っている場合です。
代表的なものに、施工管理技士・建築士・技術士・電気工事士・技能検定などがあります。
ただし、資格を持っていれば、すべての業種に使えるわけではありません。資格の種類・等級・検定区分によって、営業所技術者になれる業種が決められています。
資格によっては、取得後に一定の実務経験が必要です。候補者がいる場合は、資格名だけで判断せず、申請業種への対応と追加の実務経験の有無を調べます。
ルート2|指定学科卒業後の実務経験を使う
国家資格等がなくても、指定学科の卒業と実務経験の組み合わせで、営業所技術者になれる場合があります。申請業種に対応する指定学科を卒業し、卒業後に必要な実務経験を積んでいることが条件です。
必要な実務経験の目安は、次のとおりです。
大学・短期大学・高等専門学校の指定学科:卒業後3年以上
専門学校の指定学科で専門士または高度専門士:卒業後3年以上
高等学校・中等教育学校の指定学科:卒業後5年以上
上記以外の専門学校の指定学科:卒業後5年以上
指定学科は、申請業種ごとに決まっています。建築工事では建築学、電気工事では電気工学、管工事では機械工学などが関係します。学校名だけではなく、卒業証明書に記載された学科名や専攻内容から判断します。
このルートでは、卒業証明書に加えて実務経験証明書が必要です。卒業後に申請業種の工事へ携わったことを示す工事資料もあわせて用意します。
ルート3|第一次検定合格後の実務経験を使う
対応する施工管理技術検定の第一次検定合格者は、一定の実務経験を積むことで営業所技術者になれる場合があります。
必要な実務経験は次のとおりです。
1級第一次検定合格後:3年以上
2級第一次検定合格後:5年以上
1級第一次検定合格者は大学の指定学科卒業者、2級第一次検定合格者は高校の指定学科卒業者と同等に扱われます。
ただし、このルートは指定建設業7業種と電気通信工事業には適用されません。また、検定種目と申請業種の対応も見なければなりません。
第二次検定には合格していなくても、第一次検定に合格している人が社内にいる場合は、このルートを検討します。
ルート4|10年以上の実務経験を使う
資格・指定学科・第一次検定のいずれも使えない場合は、10年以上の実務経験というルートを検討します。申請業種での実務経験が対象です。
ただし、「建設会社で10年以上働いていた」というだけでは足りません。
実務経験として扱われるのは、申請業種の工事で施工を指揮・監督した経験、または実際の施工に携わった経験です。事務・営業・資材運搬などだけを行っていた期間は、原則として技術上の経験にはなりません。
内装仕上工事業を申請するなら内装仕上工事、管工事業なら管工事の経験を示します。別業種の経験が長くても、そのまま申請業種の10年経験として使えるわけではありません。
実務経験は工事資料と在籍資料で示す
実務経験を使う場合は、次の2点を資料でつなげます。
- その会社や個人事業で、申請業種の工事が行われていたこと
- 候補者が、その期間に証明者のもとで勤務していたこと
工事実績は、次のような資料で示します。
- 過去の建設業許可申請書
- 工事請負契約書
- 注文書・請書
- 請求書
- 入金記録
請求書を使う場合は、通帳や振込記録など、入金を裏付ける資料も必要になることがあります。
在籍期間は、社会保険や給与、源泉徴収票・確定申告書などの資料を使って整理します。
東京都で、建設業許可を持っていなかった期間を請求書等で示す場合は、請求書と入金資料を期間に沿ってそろえます。必要な期間が途切れないよう、古い工事資料まで早めに集めることが重要です。
複数の会社で経験を積んでいる場合は、勤務先ごとに期間と工事内容を分けます。過去の勤務先が廃業していたり、証明を受けられなかったりすることもあります。資料が処分されていれば、経験年数を満たしていても証明できません。
なお、電気工事や解体工事など別の法律による登録や届出が必要な工事では、対象期間の許認可資料も問題になることがあります。
複数業種を1人で担当できるか
同じ営業所であれば、1人が複数業種の営業所技術者を担当できます。たとえば、内装仕上工事業と建具工事業の両方に対応する資格を持つ人なら、1人で両業種を任せられます。
ただし、実務経験で複数業種の要件を満たす場合は注意が必要です。
同じ人が複数業種を実務経験で証明するときは、原則として同じ期間を重複して使えません。2業種をそれぞれ10年経験で申請する場合は、合計20年分の経験が必要になります。
一部の業種には、経験年数を振り替える特例があります。複数業種を申請するときは、資格で取れる業種と実務経験を使う業種を先に分けておきましょう。
特定建設業では要件が厳しくなる
特定建設業では、一般建設業よりも特定営業所技術者の要件が厳しくなります。
主な候補は次の3つです。
- 申請業種に対応する所定の国家資格者
- 一般建設業の営業所技術者要件に加えて、2年以上の指導監督的実務経験を持つ人
- 国土交通大臣の認定を受けた人
指導監督的実務経験とは、発注者から直接請け負った一定規模以上の工事における経験です。工事現場主任や現場監督などの立場から、施工全般を技術面で指導監督した経験を指します。
ただし、次の指定建設業7業種では、指導監督的実務経験だけで特定営業所技術者になることはできません。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
これらの業種では、原則として対応する1級国家資格、技術士資格または国土交通大臣の認定が必要です。
営業所技術者には常勤・専任が求められる
営業所技術者は、担当する営業所に常勤し、専らその職務に従事する人でなければなりません。
同じ会社であっても、本店と支店の営業所技術者を1人で兼ねることはできません。他社で常勤している人や、別の個人事業を営んでいる人も、原則として候補にはできません。
次のような場合は、実際の勤務状況を詳しく見られることがあります。
- 自宅と営業所が遠く、通常の通勤が難しい
- 他社からも継続的に報酬を受けている
- 他社の代表取締役や常勤役員を兼ねている
- 出向者を候補にしている
- 社会保険や給与関係の資料から所属が分かりにくい
東京都では、2026年7月1日から常勤性を示す資料の取扱いが変更されています。法人の場合は、標準報酬決定通知書や被保険者記録照会回答票など、申請会社への所属を示す資料を使用します。
公式通知では、こうした資料が12種類示されています。資料に生年月日の記載がない場合は、資格確認書・運転免許証・住民票のいずれかも提出します。
個人事業主は、直近の所得税確定申告書に加え、資格確認書・運転免許証・住民票のいずれかを提出します。
経管や現場技術者との兼任
同じ営業所に勤務し、双方の要件を満たしていれば、1人が経管と営業所技術者を兼ねることができます。
たとえば、代表取締役が建設業の経営経験を持ち、申請業種に対応する資格も持っているとします。この場合、本店の経管と営業所技術者を兼ねることがあります。
ただし、本店の経管が、別の支店の営業所技術者を兼ねることはできません。
営業所技術者は、営業所で職務に従事するのが原則です。ただし2024年12月13日の法改正により、状況が変わりました。一定の条件を満たす場合は、主任技術者または監理技術者として工事現場を兼ねられます。
自由に兼任できるわけではありません。請負金額・営業所と現場の距離・移動時間・連絡体制・雇用関係などの条件があります。現場兼任を前提に人員を配置するときは、工事ごとに要件を調べます。
営業所技術者が退職するときは後任を先に決める
営業所技術者は、許可を取るときだけ必要な人ではありません。許可取得後も、継続して置く必要があります。
退職日から後任の就任日まで空白が生じると、その業種について許可要件を欠くことになります。退職予定が分かった段階で、後任候補の資格・実務経験・常勤性を把握しておきましょう。
営業所技術者等を変更した場合は、原則として変更後2週間以内に届出を行います。後任を置けない場合は、その業種の一部廃業も視野に入れなければなりません。
資格者が1人しかいない会社では、社内での資格取得や採用も含め、早めに後任を準備することが重要です。
よくある質問
- 専任技術者と営業所技術者は同じですか?
-
基本的には同じものです。
以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、2024年12月13日施行の改正後は、法律上の名称が「営業所技術者」に変わりました。
ただし、実務では今でも「専任技術者」「専技」という呼び方が使われています。
- 営業所技術者と経管は兼任できますか?
-
同じ営業所であれば、兼任できる場合があります。
ただし、その人が経管の要件と営業所技術者の要件を両方満たしている必要があります。
代表者が建設業の経営経験を持ち、さらに資格や実務経験の要件も満たしている場合は、1人で兼ねられることがあります。
- 10年以上の実務経験は何で証明しますか?
-
主に、実務経験証明書、工事請負契約書、注文書、請求書、工事内容が分かる資料などで証明します。
個人事業主の場合は、確定申告書なども確認資料になります。
複数の会社で経験を積んでいる場合は、会社ごとに証明が必要になることがあります。
- 派遣社員を営業所技術者にできますか?
-
派遣社員を営業所技術者として立てるのは、原則として難しいです。
営業所技術者には、その営業所での常勤性や専任性が求められるためです。
出向者については、出向契約や常勤性の証明などを確認したうえで判断します。
- 営業所技術者が退職したら、すぐに許可はなくなりますか?
-
退職しただけで、直ちに許可が消えるわけではありません。
ただし、後任を置けない状態が続くと、その業種の許可を維持できません。
後任を用意できる場合は変更届を出し、用意できない場合は廃業届を検討することになります。退職予定が分かった時点で、後任候補を確認しておくことが重要です。
- 営業所技術者が見つからない場合はどうすればよいですか?
-
まず、社内の候補者を3ルートで確認します。
資格がある人はいないか。
指定学科を卒業している人はいないか。
10年以上の実務経験を証明できる人はいないか。この順番で見直します。
それでも難しい場合は、有資格者の採用、社内での資格取得、申請業種の見直しなどを検討します。
まとめ
営業所技術者は、建設工事の請負契約を行う営業所ごとに置く技術者のことです。
一般建設業では、主に次の4つのルートがあります。
- 国家資格等
- 指定学科卒業後の実務経験
- 技術検定の第一次検定合格後の実務経験
- 10年以上の実務経験
資格を持っていても、申請業種に対応していなければ使えません。実務経験を使う場合は、経験年数だけでなく、工事内容・在籍期間・資料のつながりまで示す必要があります。
また、営業所技術者には常勤・専任が求められます。退職や他社との兼任によって要件を欠かないよう、許可取得後の人員体制まで考えておきましょう。
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