建設業許可を取りたいものの、「何から確認すればよいか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
まず確認したいのは、次の3点です。
- 建設業の経営経験がある人はいるか
- 取りたい業種に対応する資格者や経験者はいるか
- 自己資本または預金残高が500万円以上あるか
この3点を満たせる可能性があれば、建設業許可の取得に向けて具体的な準備を進められます。
建設業許可には、誠実性、欠格要件、社会保険などの確認も必要です。ただし、最初に見るべきなのは、経営経験、技術者、500万円の3点です。
この記事では、東京都で一般建設業許可を取る場合を中心に、許可取得前に確認したいポイントを分かりやすく解説します。
建設業許可は6つの条件で審査される
建設業許可では、法律上の5つの要件に社会保険を加えた、次の6項目が審査の対象になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 常勤役員等・経管 | 建設業を経営した経験がある人がいる |
| ② 営業所技術者 | 必要な資格や工事経験がある人がいる |
| ③ 誠実性 | 請負契約で不正をするおそれがない |
| ④ 財産的基礎 | 一般建設業では原則500万円以上の資金を証明できる |
| ⑤ 欠格要件 | 一定の犯罪歴や許可取消歴などに該当しない |
| ⑥ 社会保険 | 加入義務のある保険に加入している |
このうち、判断に時間がかかりやすいのは①経管と②営業所技術者です。
この2つに500万円の財産的基礎を加えた3点を先に押さえると、許可を取れる見込みが早い段階で分かります。
① 常勤役員等・経管を置く
建設業許可には、建設業の経営を適切に管理できる人が必要です。
この要件は一般に「経管」と呼ばれます。現在の制度では「常勤役員等」という表現も使われます。法人なら常勤の役員、個人事業なら事業主本人などが候補です。
ここでいう経験は、建設現場で作業をしていた経験ではありません。請負契約、資金管理、人員配置、外注管理など、経営側に関わった経験が問われます。
経管でよくあるパターン
小規模な会社や個人事業では、主に次のような人が候補になります。
- 建設会社の取締役として5年以上の経験がある人
- 建設業を個人事業主として5年以上営んだ人
- 建設業の営業所長など、一定の権限を持って経営に関わった人
もっとも一般的なのは、取締役または個人事業主として5年以上の建設業経験を証明する方法です。
役員経験と補佐者の経験を組み合わせる方法もありますが、通常の5年経験より証明が複雑になります。まずは5年以上の経験を使えるかどうかから見ていきましょう。
役員経験を使う場合
法人の取締役経験を使う場合は、登記事項証明書で役員だった期間を確認します。
ただし、登記だけでは「その会社が建設業を営んでいたこと」までは分かりません。そのため、次のような資料も必要になります。
- 建設業許可通知書
- 工事請負契約書
- 注文書
- 請求書
- 入金記録
役員だった期間と、その期間の建設業の実態。この2つを書類でセットにできるかがポイントです。
個人事業主の経験を使う場合
個人事業主の経験を使う場合は、確定申告書に加えて、各年の工事実績が分かる資料を用意します。工事の契約書、注文書、請求書、入金記録などです。
経験が5年以上あっても、書類で示せなければ申請には使えません。問われるのは実態ではなく、実態を証明できる資料です。
名前だけの役員では難しい
経管になる人は、原則として主たる営業所に常勤している必要があります。
名前だけの役員や、別会社で常勤している人は認められない可能性が高いです。実際に経営に関わり、営業所に常勤できる人かどうかを見極めておきましょう。
② 営業所技術者(旧・専任技術者)を置く
建設業許可では、営業所ごとに営業所技術者を置きます。
営業所技術者とは、許可を取りたい業種について必要な資格や工事経験を持つ人のことです。令和6年12月の建設業法改正で、「専任技術者」から「営業所技術者」に名称が変わりました。求められる要件は従来と同じです。
一般建設業では、主に次のいずれかで要件を満たします。
- 業種に対応する国家資格を持っている
- 指定学科を卒業し、必要な実務経験がある
- 取りたい業種について10年以上の実務経験がある
資格がある場合
資格を持っている場合は、その資格が取りたい業種に対応しているかを調べます。
たとえば電気工事と管工事では、必要な資格が異なります。施工管理技士、建築士、電気工事士、技能士など、資格の種類によって対応できる業種も変わります。資格名のみで判断せず、「その資格でどの業種の営業所技術者になれるのか」まで見ることが大切です。
施工管理技士の第一次検定合格者も、一定の実務経験を組み合わせれば要件を満たせる場合があります。資格単独で足りるのか、実務経験の追加が必要なのか。取得している資格、合格区分、取りたい業種を突き合わせて判断しましょう。
資格がない場合
資格がなくても、実務経験で申請できることがあります。
代表的なのは、取りたい業種について10年以上の実務経験を証明する方法です。
10年分の証明となると、資料の量はどうしても多くなります。過去の契約書、注文書、請求書、入金記録を見直し、どの期間のどの工事を実務経験として使えるか整理しておきましょう。
「工事一式」の請求書は注意
実務経験として使えるのは、原則として申請する業種の工事経験です。塗装工事の経験で、管工事の営業所技術者になることはできません。
また、請求書に「工事一式」としか書かれていないと、工事内容が分かりません。その場合は、見積書、内訳書、写真、図面などで具体的な工事内容を補えるかを検討します。
経管と営業所技術者は同じ人でもよい
経管と営業所技術者は、同じ人が兼ねられます。一人親方や小規模な会社では、代表者が両方を兼ねるケースも珍しくありません。
兼任できるのは、同じ営業所に常勤している場合に限られます。本店の経管と支店の営業所技術者を1人で兼ねることはできません。複数の営業所で許可営業を行うなら、営業所ごとに必要な人員を配置できるかまで考えておく必要があります。
③ 請負契約で不正をするおそれがないこと
建設業許可では、申請者や役員などに誠実性が求められます。
誠実性とは、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことです。具体的には、詐欺、脅迫、横領、契約内容への重大な違反などが問題になります。
通常どおり事業を営んでいれば、この要件で引っかかるケースは限られます。過去に建築士事務所登録や宅建業免許の取消しなどがある場合は、申請前に整理しておくと安全です。務所登録や宅建業免許の取消しなどがある場合は、申請前に確認しておいたほうが安全です。
④ 一般建設業は500万円以上の財産的基礎が必要
一般建設業許可では、財産的な裏付けも確認されます。
原則として、次のどちらかを満たす必要があります。
- 直近決算の純資産合計が500万円以上ある
- 500万円以上の預金残高を証明できる
法人の場合は、直近の決算書で純資産合計を確認します。ここで見るのは資本金だけではありません。貸借対照表の純資産合計を確認します。
赤字決算や債務超過に近い状態でも、直ちに許可が取れないとは限りません。純資産が500万円未満でも、金融機関の残高証明書で500万円以上を示せれば、申請できる可能性があります。
東京都知事許可では、残高証明書は原則として、証明日が申請受付日から1か月以内のものを使います。
発行日ではなく、「何月何日現在の残高か」という証明日で判断される点に注意が必要です。
また、通帳のコピーだけでは代用できません。代表者個人や家族名義ではなく、申請者名義の残高証明書を用意します。
特定建設業は要件が重い
この記事では、一般建設業許可を中心に説明しています。
特定建設業許可の場合は、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上など、一般建設業より厳しい財産要件があります。
元請として大きな下請契約を発注する予定がある場合は、一般建設業で足りるのか、特定建設業が必要なのかも確認しましょう。
⑤ 一定の犯罪歴や許可取消歴などがないこと
申請者、役員、営業所の代表者などが欠格要件に該当すると、建設業許可は受けられません。
主な欠格要件は次のとおりです。
- 破産して復権を得ていない
- 一定の刑を受け、執行終了などから5年を経過していない
- 暴力団員、または暴力団員でなくなってから5年を経過していない
- 建設業許可の取消しから5年を経過していない
犯罪歴がある場合でも、すべてが欠格要件に当たるわけではありません。
刑の種類、違反した法律、処分からの期間によって判断が変わります。不安がある場合は、申請前に確認しておきましょう。
⑥ 加入義務のある社会保険に入っていること
建設業許可では、加入義務のある社会保険への加入も必要です。
対象になる主な保険は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の3つです。
法人は、社長1人の会社でも、原則として健康保険と厚生年金保険に加入します。個人事業の場合は、常時使用する従業員の人数などで判断が変わります。
| 事業者の形態 | 健康保険・厚生年金 |
|---|---|
| 法人 | 原則加入 |
| 従業員が常時5人以上の個人事業 | 原則加入 |
| 従業員が常時5人未満の個人事業 | 原則として任意 |
雇用保険は、法人か個人事業かを問わず、加入対象となる従業員を1人でも雇えば加入が必要です。役員だけの会社や一人親方なら、雇用保険の加入義務がないケースもあります。自社にどの保険の加入義務があるのか、申請前に整理しておきましょう。
まずは3つの資料を確認する
自社が要件を満たすか判断するときは、次の資料を手元に用意すると判断が早くなります。
- 役員や個人事業主としての経歴が分かる資料
- 資格証と過去の工事資料
- 直近の決算書
この3つで、経営経験、営業所技術者、500万円の財産的基礎をおおむね把握できます。
特に過去の工事資料は、後から集めるのに時間がかかります。契約書や注文書が少なくても、請求書と入金記録を組み合わせて証明できる場合があります。手元にある資料は捨てずに整理しておきましょう。
許可を取れそうか確認する5項目
次の項目に当てはまり、役員等が欠格要件に該当しなければ、許可を取れる可能性があります。
- 建設業の経営経験を原則5年以上証明できる
- 取りたい業種に対応する資格者または実務経験者がいる
- 経管と営業所技術者が営業所に常勤できる
- 純資産または預金残高が500万円以上ある
- 必要な社会保険に加入している
判断できない項目があっても、直ちに申請できないとは限りません。
役員歴、資格、過去の工事資料を確認すると、別の証明方法が見つかる場合があります。
「契約書が残っていない」「資格が足りるか分からない」「500万円の確認方法が不安」という段階でも、まずは資料を整理することが大切です。
よくある質問
- 1つでも要件を満たさないと許可は取れませんか?
-
原則として、すべての要件を満たす必要があります。
ただし、現在の体制では足りないように見えても、役員や技術者の配置、実務経験の証明方法を見直すことで申請できる場合があります。
まずは、どの要件が足りていて、どの要件が不足しているのかを整理しましょう。
- 資本金が500万円未満でも申請できますか?
-
申請できる可能性があります。
一般建設業では、資本金だけで判断するわけではありません。直近決算の純資産合計が500万円以上あれば、財産的基礎を満たせる可能性があります。
また、純資産が500万円未満でも、500万円以上の預金残高を証明できれば申請できる場合があります。
- 経験はあるものの契約書が残っていません
-
契約書が残っていなくても、注文書、請求書、入金記録などで証明できる場合があります。
ただし、どの資料をどのように組み合わせるかが重要です。
特に実務経験で営業所技術者の要件を満たそうとする場合は、工事内容や期間を確認できる資料が必要になります。手元に残っている資料を整理してから判断しましょう。
- 申請してから許可が出るまでどのくらいかかりますか?
-
東京都知事許可の標準処理期間は、申請受付後25開庁日です。
土日祝日などの閉庁日は含まれません。また、書類の補正にかかる期間は含まれないため、不足資料があるとさらに時間がかかります。
経営経験や実務経験を示す資料の準備期間は別に必要です。
- 経管と営業所技術者は同じ人が兼任できますか?
-
同じ営業所で常勤していれば、1人で兼任できます。
一人親方や小規模な会社では、代表者が経管と営業所技術者を兼ねるケースもあります。
ただし、本店の経管と支店の営業所技術者など、異なる営業所間での兼任はできません。
- 社会保険に未加入でも許可を取れますか?
-
加入義務がある保険に未加入のままでは、建設業許可を取ることはできません。
法人は、社長1人の会社でも健康保険と厚生年金保険への加入が原則必要です。
従業員を雇っている場合は、雇用保険の加入義務も確認しましょう。
まとめ
建設業許可を取りたい場合、まず確認したいのは次の3点です。
- 建設業の経営経験を原則5年以上証明できるか
- 取りたい業種に対応する資格者や実務経験者がいるか
- 純資産または預金残高が500万円以上あるか
この3点を確認したうえで、誠実性、欠格要件、社会保険の状況を整理すると、許可を取れる見込みが分かりやすくなります。
建設業許可は、要件そのものも大切ですが、その要件を資料で証明できるかが重要です。
経験があっても、資料がなければ申請に使えないことがあります。一方で、契約書が残っていない場合でも、請求書や入金記録などを組み合わせて証明できる場合もあります。
当事務所では、葛飾区を拠点に、東京都内の建設業許可申請をサポートしています。
「今の状態で許可を取れそうか分からない」 「契約書や注文書が残っていない」 「資格や経験で要件を満たせるか不安」
このような段階でも、お気軽にお問い合わせください。手元の資料を拝見しながら、申請に向けた進め方をご案内いたします。
新規申請9.9万円~(税込) 東京都への申請手数料9万円は別途必要です。

