建設業許可の5要件|経管・営業所技術者・500万円を解説

建設資材置場と白い作業車で示す建設業許可の5要件

建設業許可は、申請書を作るだけで取得できるものではありません。常勤役員等や営業所技術者等を置けるか、財産的基礎を満たせるか。申請前に整えておくべき条件がいくつかあります。

なかでも、取得の見込みを大きく左右するのは次の3点です。

  • 建設業の経営経験を持つ人がいるか
  • 取得する業種に対応した資格者または実務経験者がいるか
  • 自己資本が500万円以上あるか、または500万円以上の資金調達能力を示せるか

この3点を満たせる可能性があれば、必要書類を集め、申請に向けた準備を進められます。

このほかにも、誠実性、欠格要件、加入義務のある社会保険などが審査の対象になります。ただし、まずは経営経験・営業所技術者等・財産的基礎の3点を押さえておけば、許可取得の見通しを立てやすくなります。

この記事では、東京都で一般建設業許可を取得する場合を中心に、必要な要件と証明書類を分かりやすく解説します。

目次

建設業許可に必要な5つの要件

建設業許可を受けるには、建設業法7条に定められた4つの許可要件を満たし、あわせて同法8条の欠格要件に該当しないことが必要です。

加入義務のある社会保険への適切な加入は、常勤役員等とともに「経営業務の管理を適正に行う能力」の要件に含まれます。

  • 経営業務の管理を適正に行う能力 常勤役員等がいる/適正な社会保険に加入している
  • 営業所技術者等 必要な資格や工事経験がある人がいる
  • 誠実性 請負契約で不正をするおそれがない
  • 財産的基礎等 一般建設業では原則500万円以上の自己資本等を証明できる
  • 欠格要件 一定の犯罪歴や許可取消歴などに該当しない
建設業許可の要件

建設業許可で確認する5つの要件

まずは、常勤役員等・営業所技術者等・財産的基礎の3点から確認します。

最初に確認したい3つ
01

経営業務の管理を
適正に行う能力

建設業の経営経験を持つ常勤役員等を置き、加入義務のある社会保険に加入していること。

02

営業所技術者等

取得する業種に対応した資格や実務経験を持つ人を、営業所ごとに配置すること。

04

財産的基礎

一般建設業では、原則として500万円以上の自己資本または資金調達能力を示すこと。

あわせて確認する2つ
03

誠実性

請負契約に関して、不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと。

05

欠格要件

一定の犯罪歴、許可取消歴、暴力団との関係など、法律上の欠格要件に該当しないこと。

5つの要件を満たすだけでなく、書類によって証明できることが必要です。 特に、常勤役員等の経営経験と営業所技術者等の資格・実務経験は、確認に時間がかかることがあります。

①経営業務の管理を適正に行う能力(常勤役員等・社会保険)

建設業許可の1つ目の要件は、「経営業務の管理を適正に行う能力」を備えていることです。

この要件は、主に次の2点から判断されます。

  • 建設業の経営経験などを持つ常勤役員等を置いていること
  • 加入義務のある社会保険に適切に加入していること

常勤役員等の経験だけでなく、社会保険の加入状況も含めて1つの要件として審査されます。それぞれの内容を順に解説します。

常勤役員等(経管)を置く

建設業許可を受けるには、建設業の経営を適切に管理できる人を置く必要があり、この役割を担う人が「常勤役員等」で、一般には「経管」と呼ばれています。

法人では常勤の役員、個人事業では事業主本人などが候補になります。

求められるのは、建設現場で作業した経験ではありません。請負契約の締結、資金管理、人員配置、外注先の管理など、建設業の経営に携わった経験が問われます。

経管でよくあるパターン

小規模な会社や個人事業では、主に次のような人が候補になります。

  • 建設会社の取締役として5年以上の経験がある人
  • 建設業を個人事業主として5年以上営んだ人
  • 建設業の営業所長など、一定の権限を持って経営に関わった人

もっとも一般的なのは、取締役または個人事業主として5年以上の建設業経験を証明する方法です。

役員経験と補佐者の経験を組み合わせる方法もありますが、通常の5年経験より証明が複雑になります。まずは5年以上の経験を使えるかどうかから見ていきましょう。

役員経験を使う場合

法人の取締役としての経験を使う場合は、登記事項証明書によって役員の在任期間を確認します。

ただし、登記事項証明書だけでは、その会社が在任期間中に建設業を営んでいたことまでは証明できません。そのため、次のような資料を組み合わせます。

  • 建設業許可通知書
  • 工事請負契約書
  • 注文書
  • 請求書
  • 入金記録

ポイントは、「役員として在任していた期間」と「その期間に会社が建設業を営んでいた事実」の両方を、書類で裏付けることです。

個人事業主の経験を使う場合

個人事業主の経験を使う場合は、確定申告書に加えて、各年の工事実績が分かる資料を用意します。工事の契約書、注文書、請求書、入金記録などです。

経験が5年以上あっても、書類で示せなければ申請には使えません。問われるのは実態ではなく、実態を証明できる資料です。

名前だけの役員では難しい

経管となる常勤役員等は、原則として主たる営業所に常勤している必要があります。

そのため、名義だけの役員や、別の会社で常勤している人は、通常は認められません。実際に建設業の経営に携わり、主たる営業所で継続して勤務できる人かどうかを確認しておきましょう。

適正な社会保険への加入

建設業許可では、加入義務のある社会保険への加入も必要です。

対象になる主な保険は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の3つです。

法人は、社長1人の会社でも、原則として健康保険と厚生年金保険に加入します。個人事業の場合は、常時使用する従業員の人数などで判断が変わります。

事業者の形態健康保険・厚生年金
法人原則加入
従業員が常時5人以上の個人事業原則加入
従業員が常時5人未満の個人事業原則として任意

雇用保険は、法人か個人事業かを問わず、加入対象となる従業員を1人でも雇えば加入が必要です。役員だけの会社や一人親方なら、雇用保険の加入義務がないケースもあります。

② 営業所技術者(旧・専任技術者)を置く

建設業許可では、許可を受けて営業する営業所ごとに、営業所技術者等を置く必要があります。

営業所技術者等とは、取得する業種について、必要な資格や実務経験を持つ人です。令和6年12月の建設業法改正により、従来の「専任技術者」は「営業所技術者」へ名称が変更されました。名称は変わりましたが、従来の資格や実務経験が直ちに使えなくなったわけではありません。

一般建設業では、主に次のいずれかによって要件を満たします。

  • 取得する業種に対応した国家資格を持っている
  • 指定学科を卒業し、所定の実務経験がある
  • 取得する業種について10年以上の実務経験がある

資格がある場合

資格を持っているなら、まず確認すべきことがあります。その資格が、取得したい業種に対応しているかどうかです。

電気工事業と管工事業では、営業所技術者等として認められる資格が違います。施工管理技士・建築士・電気工事士・技能士など。資格の種類や区分によって、対応できる業種も変わります。

資格名だけで判断するのは危険です。その資格で、どの業種の営業所技術者等になれるのかまで調べる必要があります。

施工管理技士の第一次検定合格者には、注意点があります。一定の実務経験を組み合わせることで、要件を満たせる場合があるからです。資格だけで足りるのか。追加の実務経験が必要なのか。資格の種類、合格区分、取得する業種。この3つから見極めます。

資格がない場合

資格がなくても、実務経験によって営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。代表的なのは、取得する業種について10年以上の実務経験を証明する方法です。

ただし、10年分の経験を証明するのは簡単ではありません。相応の資料が必要になるからです。過去の契約書・注文書・請求書・入金記録。こうした書類を一つずつ整理していきます。

そのうえで、どの期間の工事を使うか。どの工事を実務経験に含めるか。これを一つずつ明らかにしていきます。

「工事一式」の請求書は注意

実務経験として使えるのは、原則として取得する業種に対応した工事経験です。例えば、塗装工事の経験を使って、管工事業の営業所技術者等になることはできません。

また、請求書に「工事一式」としか記載されていない場合は、具体的な工事内容を読み取れません。その場合は、見積書、内訳書、工事写真、図面などを組み合わせ、申請する業種の工事であることを補足します。

常勤役員等と営業所技術者等は兼任できる

常勤役員等と営業所技術者等は、要件さえ満たせば同じ人が兼任できます。小規模な会社や一人親方なら、代表者が兼ねる例も多くあります。

とはいえ、無条件というわけではありません。兼任が認められるのは、同じ営業所に常勤している場合に限られます。たとえば本店の常勤役員等が、別支店の営業所技術者等を兼ねる。これはできません。

複数の営業所で許可を取るなら、話は変わってきます。各営業所に必要な人員をきちんと配置できるか、そこまで見込んでおく必要があります。

③ 請負契約で不正をするおそれがないこと

建設業許可では、申請者や役員などに誠実性が求められます。ここでいう誠実性とは、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことです。

詐欺・脅迫・横領・契約内容への重大な違反があれば、この要件を欠くとみなされます。

とはいえ、通常どおり事業を営んでいれば、この要件に触れることはまずありません。

気をつけたいのは、過去に処分を受けたことがある場合です。請負契約や他の許認可に関して不正・不誠実な行為を理由とする処分歴があるなら、申請前に必ず確認しておく必要があります。

④ 一般建設業は500万円以上の財産的基礎が必要

財産的基礎を満たす3つの基準

次の3つのうち、いずれか1つを満たす必要があります。

1

自己資本が500万円以上ある

法人では、原則として直近決算の貸借対照表に記載された純資産合計を確認します。

2

500万円以上の資金調達能力がある

申請者名義の預金残高証明書などにより、500万円以上の資金調達能力を示します。

3

直前5年間、許可を受けて継続して営業している

許可申請直前の過去5年間、建設業許可を受けて継続して営業した実績がある場合です。

初めて許可を申請する場合は、通常、自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力によって要件を満たします。

一般建設業許可では、財産的な裏付けも確認されます。財産的基礎は、次のいずれかで示します。

  • 自己資本が500万円以上ある
  • 500万円以上の資金調達能力がある
  • 許可申請直前の過去5年間、建設業許可を受けて継続して営業した実績がある

初めて申請する場合は、主に自己資本または資金調達能力によって要件を確認します。

法人なら、自己資本は直近の貸借対照表にある純資産合計で判断します。自己資本が500万円に満たなくても、対応できる場合があります。申請者名義の預金残高証明書などで、500万円以上の資金調達能力を示せるからです。

ここで注意したいのが、残高証明書の有効期間です。東京都知事許可では、証明日が申請受付日から1か月以内のものを使うのが原則です。ポイントは発行日ではありません。「何月何日現在の残高か」を示す証明日で判断される点です。

なお、通帳のコピーは代用できません。用意すべきは、代表者個人や家族名義ではなく、申請者名義の残高証明書です。

特定建設業は財産要件が厳しくなる

特定建設業許可を受ける場合は、一般建設業よりも厳しい財産要件をすべて満たさなければなりません。

  • 欠損額が資本金の20%を超えていない
  • 流動比率が75%以上である
  • 資本金が2,000万円以上ある
  • 自己資本が4,000万円以上ある

いずれか1つではなく、4つすべてを満たす必要があります。

元請として一定規模以上の下請契約を締結する予定がある場合は、一般建設業許可で足りるのか、特定建設業許可が必要になるのかも見極めておきましょう。

⑤ 一定の犯罪歴や許可取消歴などがないこと

申請者本人のほか、法人の役員や営業所の代表者などが欠格要件に該当する場合、建設業許可は受けられません。

主な欠格要件は次のとおりです。

  • 破産手続開始の決定を受け、復権を得ていない
  • 一定の刑に処せられ、その執行を終えた日などから5年を経過していない
  • 暴力団員である、または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない
  • 不正な手段による許可取得などを理由に許可を取り消され、5年を経過していない

犯罪歴があるからといって、直ちに欠格要件に該当するわけではありません。刑の種類、違反した法令、刑の執行状況、処分からの経過期間などによって扱いが異なります。

よくある質問

1つでも要件を満たさないと許可は取れませんか?

原則として、すべての要件を満たす必要があります。

ただし、現在の体制では足りないように見えても、役員や技術者の配置、実務経験の証明方法を見直すことで申請できる場合があります。

まずは、どの要件が足りていて、どの要件が不足しているのかを整理しましょう。

資本金が500万円未満でも申請できますか?

申請できる可能性があります。

一般建設業では、資本金だけで判断するわけではありません。直近決算の純資産合計が500万円以上あれば、財産的基礎を満たせる可能性があります。

また、純資産が500万円未満でも、500万円以上の預金残高を証明できれば申請できる場合があります。

経験はあるものの契約書が残っていません

契約書が残っていなくても、注文書、請求書、入金記録などで証明できる場合があります。

ただし、どの資料をどのように組み合わせるかが重要です。

特に実務経験で営業所技術者の要件を満たそうとする場合は、工事内容や期間を確認できる資料が必要になります。手元に残っている資料を整理してから判断しましょう。

申請してから許可が出るまでどのくらいかかりますか?

東京都知事許可の標準処理期間は、申請受付後25開庁日です。

土日祝日などの閉庁日は含まれません。また、書類の補正にかかる期間は含まれないため、不足資料があるとさらに時間がかかります。

経営経験や実務経験を示す資料の準備期間は別に必要です。

経管と営業所技術者は同じ人が兼任できますか?

同じ営業所で常勤していれば、1人で兼任できます。

一人親方や小規模な会社では、代表者が経管と営業所技術者を兼ねるケースもあります。

ただし、本店の経管と支店の営業所技術者など、異なる営業所間での兼任はできません。

社会保険に未加入でも許可を取れますか?

加入義務がある保険に未加入のままでは、建設業許可を取ることはできません。

法人は、社長1人の会社でも健康保険と厚生年金保険への加入が原則必要です。

従業員を雇っている場合は、雇用保険の加入義務も確認しましょう。

まとめ

建設業許可を取得するには、経営業務の管理能力、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎、欠格要件のすべてを満たす必要があります。

取得に向けて、まず次の3点を押さえます。

  • 常勤役員等(経管)の要件を満たす人
  • 営業所技術者等の要件を満たす人
  • 500万円以上の自己資本または資金調達能力

経営経験や実務経験を使う場合は、その期間を裏付ける契約書、注文書、請求書、入金記録なども必要です。

要件を満たしていても、資料が不足すると申請に使えない場合があります。許可の取得を検討し始めた段階から、経験の内容と手元の書類を整理しておきましょう。

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