トラックGメン(物流Gメン)と取締り強化|違反時の罰則と事業者が知るべき対策

コラム

物流業界における「2024年問題」やドライバー不足への対策として、国や道路管理者による監視体制は2026年現在、大きく強化されています。

特に重要なのは、荷主企業を監視する「トラック・物流Gメン」と、道路上で違反車両を物理的に排除する「即時措置命令」の2つの動きです。これらが機能すると、法令違反で利益を出そうとする事業者は経営継続が難しくなります。

本記事では最新の取締り動向と事業者が知っておくべきポイントをまとめました。

1. 「トラック・物流Gメン」とは? 誰を監視するのか

国土交通省の専門部隊「トラックGメン」は、令和6年(2024年)11月に「トラック・物流Gメン」へと組織を再編・拡充しました。総勢360名規模の体制となり、荷主・元請への監視は大幅に強化されています。

狙いは「荷主・元請」への指導

トラック・物流Gメンは、トラック事業者を取り締まる存在ではありません。最大の特徴は、「トラック運送事業者の味方」として動き、長時間労働や違反の原因を作っている「荷主(仕事を依頼する側)」や「元請事業者」に対して、国が代わりに改善を求める点にあります。

Gメンが監視する「違反原因行為」とは

トラック・物流Gメンは、通報を待つだけでなく、パトロールや電話調査によって積極的に情報を集めています。以下のような「法令違反の原因となる荷主の行為」が見つかった場合、国は「働きかけ」や「要請」を行い、悪質なケースでは社名を公表する「勧告」を行います。

長時間の荷待ち: ドライバーを長時間待たせることで拘束時間を超過させ、過労運転の原因を作ること

契約外のタダ働き(附帯作業): 契約に含まれない「棚入れ」「ラベル貼り」「検品」などの作業を、無償でドライバーに押し付けること

過積載の強要: 最大積載量を超えた状態で走行させること

無理な配送依頼: スピード違反や休憩なしで走らなければ間に合わないような、過酷な到着時間を指定すること

監視対象は「倉庫業者」にも拡大

組織の拡充に伴い、監視の目は荷主や元請だけでなく、倉庫業者にも向けられています。倉庫での荷待ち時間や荷役作業の実態も、Gメンによる情報収集の対象となっています。

【2025年末時点の実績】

活動は徹底されており、是正指導の件数は「働きかけ」が2,273件、「要請」が195件に上ります。さらに、改善が見られない悪質な事例に対しては、最も重い「勧告(社名公表)」が5件実施されています。

【2025年10月】是正指導の基準が明確化

これまで「どこからが是正指導の対象か」が分かりにくいという声がありましたが、令和7年(2025年)10月に「荷主への是正指導指針」が新たに定められました。これにより、指導の基準が明確になり、言い逃れができない環境が整備されています。

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2. 道路上での取締り強化(NEXCO・警察)

トラック・物流Gメンが企業の「取引」を監視する一方で、道路管理者(NEXCO等)と警察は、物理的に「違反車両を走らせない」ための取締りを強化しています。

「ここですぐ降りなさい」即時措置命令

高速道路の料金所等で行われる取締りで、重さや長さが一般的制限値(重量20t〜25t等)を超えていると判断された場合、その場で「措置命令書」が交付されます。

特に悪質な違反に対しては、「今すぐここで高速を降りなさい」という命令が下されます。

  • 輸送の完全ストップ: 違反状態が解消される(荷物を別の車に移す、許可が下りるなど)まで、その場から一歩も動けなくなります
  • 納期遅延の確定: 「積荷を減らせ」と命じられれば、当然、予定通りに荷物を届けることは不可能になります

「合同取締り」とGメンの連携

近年増えているのが、NEXCO、警察、運輸局がチームを組んで行う「合同取締り」です。ここには「トラック・物流Gメン」も参加しています。

  • 車両の違反は警察・NEXCOが処理: 重量オーバーなどをその場で摘発
  • 背景の調査はGメンが担当: ドライバーへの聞き取りを行い、「なぜ過積載をしたのか?」「荷主から無理な指示はなかったか?」という違反の背景をその場で調査します

道路で捕まることは、そのまま「荷主への調査」に直結する仕組みができあがっています。

公正取引委員会との連携が本格化

さらに令和7年(2025年)9月からは、公正取引委員会と連携した「合同荷主パトロール」が全国規模で実施されています。独占禁止法や下請法を所管する公取委が動くことで、悪質な取引に対する監視の目は最大級に厳しくなっています。


3. 違反した場合のペナルティと罰則

違反が発覚した場合、現場のドライバーだけでなく、運行を指示した法人(会社)や荷主に対しても厳しい責任が問われます。

① 刑事罰・罰金(会社も一緒に処罰)

  • 「100万円以下」の罰金: 無許可での走行、許可証の不携帯、報告時のウソ(虚偽記録)などが対象です
  • 「6ヶ月以下の懲役」または「30万円以下」の罰金: 「止まりなさい」という命令(措置命令)に従わなかったり、重量制限のある橋やトンネルを無許可で通ったりした場合に科されます。令和7年(2025年)6月より厳罰化されています

② 行政処分と社会的制裁

罰金だけでなく、物流事業を継続する上で深刻な影響を及ぼす行政措置が取られます。

  • 社名の公表(ブラックリスト化): 是正指導に従わない悪質な事業者は、社名や違反内容が公表され、社会的信用を失います
  • 許可の取消し: 重大な違反や常習的な違反が確認された場合、すでに持っている特殊車両通行許可が取り消されることがあります
  • 高速料金の割引停止: 違反点数がたまると、NEXCOの「大口・多頻度割引制度」が停止されます。割引がなくなればコストが急増し、経営を圧迫します

4. 事業者が対策すべきポイント(2026年現在)

制度変更に対応し、リスクを回避するために以下の点を必ず押さえてください。

1. 新法「取適法」への対応(2026年1月〜)

令和8年(2026年)1月1日より、従来の下請法の規制が移行・再編され、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(取適法)」が適用されています。個人事業主ドライバーや小規模事業者との取引において、買いたたきの防止や取引条件の明示など、より厳格なコンプライアンスが求められます。

参照リンク: 政府広報オンライン

2. 「特車確認制度」で無許可走行を回避

ダブル連結トラックなどは「特殊車両通行確認制度」の対象です。従来の許可制度(申請から約1ヶ月)とは異なり、オンラインで即時に経路確認と回答書の取得が可能です。急な配送でも「許可待ち」を理由にした無許可走行のリスクをゼロにできます。

3. 優良事業者認定(特車ゴールド)の活用

業務支援用ETC2.0を装着し、登録を受けた優良事業者は「特車ゴールド制度」を利用できます。

  • 更新の手間削減: 許可更新の手続きが簡素化(ワンクリック申請等)されます
  • ルート選択の自由: 大型車誘導区間であれば、事前に許可された経路以外も柔軟に走行可能になります

4. 白ナンバートラックへの委託に注意

荷主企業が、営業ナンバー(緑色)ではない「白ナンバー(自家用)」のトラックに対して、有償で運送を依頼することは法令違反です。トラック・物流Gメンは、こうした違法営業に関する啓発も強化しています。取引先の車両が適法な営業車両であるか、必ず確認してください。

5. まとめ

2026年現在、道路上の取締りと荷主企業への監視(トラック・物流Gメン)がセットで強化されています。さらに公正取引委員会との連携や、倉庫業者への監視拡大により、監視の網は確実に広がっています。

法令違反は「100万円以下の罰金」や「社名公表」といった直接的なダメージだけでなく、荷主からの信頼失墜や取引停止に直結するリスクがあります。コンプライアンス遵守は、経営の最優先事項と言えます。