前回までの記事で、トラクタとトレーラの車両諸元一覧表(Excel)の作成方法を解説しました。
トラクタとトレーラを連結して使用する場合、もう1つ準備が必要です。それが「連結最小回転半径」の計算です。この数値は申請システムで必須項目となっており、入力しないと先に進めません。
特に中古車や、トラクタ(ヘッド)とトレーラ(台車)を別々に購入した場合は、自分で計算する必要があります。今回は、国土交通省が配布している計算シートを使って、この数値を求める方法を解説します。
単位変換を間違えると差戻しの原因となるため、注意点も詳しく説明します。
1. 連結最小回転半径とは?なぜ計算が必要なのか
最小回転半径の定義
「連結最小回転半径」とは、トラクタ(ヘッド)とトレーラ(台車)を連結した状態で、ハンドルを限界まで切って回ったときに、一番外側のタイヤが描く円の半径のことです。
つまり、「どれくらい小回りが利くか」を表す数値です。日本の道路ルール(一般的制限値)では12.0メートル以下であることが求められます。
車検証には載っていない
車検証に書かれているのは、あくまで「トラクタ単体」や「トレーラ単体」の寸法です。しかし、特車申請で必要なのは「連結した状態」での旋回能力です。
この数値は「どのヘッド」と「どの台車」を組み合わせるかによって変化するため、個々の車検証には記載されていません。
数値の出し方は?
車両の入手方法によって確認の仕方が異なります。
新車でセット購入した場合
ディーラーから渡される「連結検討書」という書類に計算済みの数値が載っているので、それを使います(計算不要)。
中古車や、別々に購入した場合
連結時の数値が不明なため、自分で計算する必要があります。その際は、国土交通省が配布している「連結最小回転半径計算シート(Excel)」に寸法を入力するだけで、自動的に算出できます。
申請システムでの必須項目
オンライン申請システムで車両を登録する際に、この「最小回転半径」の入力欄は必須項目です。ここを空欄のままにすると、その先の画面(車両番号の入力など)に進むことができません。
申請をスタートさせるために必ず埋めなければならない項目です。

2. 計算シートのダウンロードと入手方法
ダウンロード先
国土交通省の「特車PRサイト」にある「各種ダウンロード」ページから、「連結最小回転半径計算シート(Excel形式)」をダウンロードします。
アクセス方法:
- 特車PRサイトへアクセス
- 「申請様式・その他マニュアル等」をクリック
- 「連結最小回転半径計算シート[Excel形式]」を選択してダウンロード
ファイルを開く
ダウンロードしたExcelファイルを開くと、計算式が入っていますが、複雑な操作は不要です。水色のセルに必要な数値を入力するだけで、黄色のセルに計算結果が自動的に表示されます。
3. エクセルへの入力項目(6つの項目)
水色のセルに、以下の「6つの項目(5つの数値と1つの選択肢)」を入力します。

① トラクタ軸距(L1)
トラクタ(ヘッド)のホイールベース、つまり前輪中心から後輪中心までの距離です。
- 入力元: 車検証の「軸距」欄
- 単位: mm(ミリメートル)
- 例: 3,710mm → 3710 と入力
② トレーラ軸距(L2)
ここが間違いやすいポイントです。車検証の長さではなく、「キングピン(連結ピン)から、トレーラの後輪(軸群)の中心までの距離」を入力します。
- 入力元: 車両外観図(図面)
- 注意: 図面を見て、キングピン位置からタイヤまでの距離を測るか、計算して求めてください
- 単位: mm(ミリメートル)
- 例: 7,500mm → 7500 と入力
③ トラクタ前輪輪距の1/2の値(l1)
トラクタの最前軸の「輪距(トレッド/左右タイヤの中心間距離)」を半分にした数値を入力します。
- 入力元: 主要諸元表または図面
- 計算: 輪距 ÷ 2
- 例:
- 輪距:2,050mm
- 計算:2,050 ÷ 2 = 1,025mm
- 入力:1025
④ トレーラ輪距の1/2の値(l2)
トレーラの後軸の「輪距(トレッド)」を半分にした数値を入力します。
- 入力元: 主要諸元表または図面
- 計算: 輪距 ÷ 2
- 例:
- 輪距:1,850mm
- 計算:1,850 ÷ 2 = 925mm
- 入力:925
⑤ トラクタカプラオフセット(S)
ヘッドの後輪中心から、カプラ(連結器)の中心までのズレ幅です。多くのトラクタは、後軸の中心より少し前にカプラが付いています。
- 入力元: 車両外観図(図面)
- 単位: mm(ミリメートル)
- 例: 175mm → 175 と入力
⑥ トレーラ軸数
トレーラの後ろに付いているタイヤの軸数(2軸、3軸など)をプルダウンで選びます。
選択肢:
- 2軸
- 3軸
- 4軸
これを選択することで、計算に必要な係数が自動的にセットされます。
自動計算される項目(入力不要)
以下の項目は、上記を入力するとエクセルが自動的に計算してくれます。自分で入力する必要はありません。
- DL: トレーラ軸数を選択すると自動的に計算されます
- Li 及び Lc: 計算過程の数値として自動表示されます
- R: 最終的な「連結最小回転半径」の結果です

4. 計算結果の確認と単位変換
数値をすべて入力すると、黄色いセルに「R:連結時の最小回転半径」が表示されます。この数値を申請システムに入力しますが、単位の違いに注意が必要です。
単位を「mm」から「cm」へ変換してください
エクセルシートの計算結果をそのまま申請システムに入力してはいけません。エクセルと申請システムでは使用する単位が異なります。

正しい変換方法
エクセルに表示された数値を「cm」に直し、小数点以下を四捨五入して入力してください。
変換手順(例:計算結果が 10548 mm の場合)
ステップ1: cmに換算する
10548 mm ÷ 10 = 1054.8 cm
ステップ2: 四捨五入する
1054.8 cm → 1055 cm
ステップ3: システムに入力
申請システムの入力欄:1055
間違えるとこうなる
もし単位を修正せず「10548」のまま入力してしまうと、システムは「10548cm = 105.48メートル」と解釈します。つまり、「半径100メートルを超える巨大車両」として扱われてしまいます。
これは審査におけるエラーや差戻しの原因となるため、入力前に必ず桁数を確認してください。
変換の早見表
| エクセル表示 (mm) | 変換計算 | システム入力 (cm) |
|---|---|---|
| 10548 mm | 1054.8 cm | 1055 |
| 11280 mm | 1128.0 cm | 1128 |
| 9850 mm | 985.0 cm | 985 |
5. システムへの入力タイミングと画面位置
計算した数値を「いつ、どこに」入力するかが、初心者には分かりにくいポイントです。ここで明確にしておきましょう。
入力のタイミング
STEP③「車両情報の入力」の中の、「軸種追加」を行った直後です。
具体的には、トラクタとトレーラの組み合わせ(例:3軸トラクタ+2軸トレーラなど)を選択した後、画面の右端に入力欄が現れます。
具体的な場所
「申請車両情報登録メニュー」画面の右端にある「最小回転半径(cm)」という欄に入力します。
注意点
軸種(例:3軸トラクタ+2軸トレーラなど)を選択した後でないと、入力欄が有効になりません。軸種を選択してから、Excelで計算した「cm単位の数値」を入力してください。

6. 12メートルを超えていたら?
計算結果が「12.0m(1200cm)」を超えた場合、少し注意が必要です。
12m以下の場合
一般的制限値(最高限度)の範囲内です。基本的には問題なく申請できます。
12m超の場合
車両制限令における「一般的制限値」を超えるため、「特殊な車両」として扱われます。
具体的な影響
許可自体は降りますが、一般的制限値を超える「超寸法車両」となるため、以下の条件が付きやすくなります。
個別審査の対象になる可能性
一般的制限値(12m)を超えると、自動審査で終わらず、道路管理者による個別の協議(個別審査)が必要になるケースが増え、許可までの期間が長引く可能性があります。
誘導車の配置が必要
半径が大きいと交差点で対向車線にはみ出すため、交差点やカーブ通過時に「誘導車」の配置が条件(C条件・D条件)として付される可能性が高まります。
よく発生するケース:
- ポールトレーラ
- 極端に長いトレーラ
- 重セミトレーラ
12.1mになってしまったら?(数値の微調整)
計算結果が「12.1m」など、ギリギリ12mを超えてしまうことがあります。
この場合、トラクタの「カプラ(連結器)」がスライド可動式であれば、カプラ位置を前方にずらす(オフセット値を大きくする)ことで、計算上の回転半径を小さくできる場合があります。
12m以内に収まると「一般的制限値内」となり、審査期間の短縮や条件の緩和につながるため、可動式カプラの場合は図面を確認してみてください。

7. まとめ:計算完了のチェックリスト
連結最小回転半径の計算が完了したら、以下の項目を確認してください。
- 国土交通省の計算シートをダウンロードした
- 6つの入力項目(5つの数値+1つの選択肢)をすべて入力した
- 計算結果が黄色いセルに表示された
- 単位を「mm」から「cm」に変換した(÷10)
- 小数点以下を四捨五入した
- 桁数を確認した(4桁程度が正常)
- 12mを超えていないか確認した
- 申請システムの「最小回転半径(cm)」欄に入力した
よくある質問
Q1. 計算シートが見つかりません。どこにありますか?
A. 国土交通省の「特車PRサイト」→「申請様式・その他マニュアル等」→「連結最小回転半径計算シート[Excel形式]」からダウンロードできます。
Q2. トレーラ軸距(L2)が分かりません。どうすればいいですか?
A. 車検証には載っていません。車両外観図(図面)を確認し、キングピン(連結ピン)からトレーラの後輪中心までの距離を測ってください。図面がない場合は、販売店に問い合わせてください。
Q3. 計算結果が100メートルを超えています。おかしいですか?
A. 単位変換を忘れている可能性があります。エクセルの結果は「mm(ミリメートル)」で表示されますが、システムには「cm(センチメートル)」で入力する必要があります。10で割って入力してください。
Q4. 12mを超えてしまいました。申請できませんか?
A. 申請自体は可能です。ただし、個別審査の対象となる可能性があり、誘導車の配置などの条件が付きやすくなります。可動式カプラの場合は、カプラ位置を調整することで12m以内に収まる場合があります。



