【Excel準備編⑤】連結最小回転半径計算シートの使い方|単位変換の重要ポイント

コラム

前回までの記事で、トラクタトレーラの車両諸元一覧表(Excel)の作成方法を解説しました。

トラクタとトレーラを連結して使用する場合、もう1つ準備が必要です。それが「連結最小回転半径」の計算です。この数値は申請システムで必須項目となっており、入力しないと先に進めません。

特に中古車や、トラクタ(ヘッド)とトレーラ(台車)を別々に購入した場合は、自分で計算する必要があります。今回は、国土交通省が配布している計算シートを使って、この数値を求める方法を解説します。

単位変換を間違えると差戻しの原因となるため、注意点も詳しく説明します。

1. 連結最小回転半径とは?なぜ計算が必要なのか

最小回転半径の定義

「連結最小回転半径」とは、トラクタ(ヘッド)とトレーラ(台車)を連結した状態で、ハンドルを限界まで切って回ったときに、一番外側のタイヤが描く円の半径のことです。

つまり、「どれくらい小回りが利くか」を表す数値です。日本の道路ルール(一般的制限値)では12.0メートル以下であることが求められます。

車検証には載っていない

車検証に書かれているのは、あくまで「トラクタ単体」や「トレーラ単体」の寸法です。しかし、特車申請で必要なのは「連結した状態」での旋回能力です。

この数値は「どのヘッド」と「どの台車」を組み合わせるかによって変化するため、個々の車検証には記載されていません。

数値の出し方は?

車両の入手方法によって確認の仕方が異なります。

新車でセット購入した場合

ディーラーから渡される「連結検討書」という書類に計算済みの数値が載っているので、それを使います(計算不要)。

中古車や、別々に購入した場合

連結時の数値が不明なため、自分で計算する必要があります。その際は、国土交通省が配布している「連結最小回転半径計算シート(Excel)」に寸法を入力するだけで、自動的に算出できます。

申請システムでの必須項目

オンライン申請システムで車両を登録する際に、この「最小回転半径」の入力欄は必須項目です。ここを空欄のままにすると、その先の画面(車両番号の入力など)に進むことができません。

申請をスタートさせるために必ず埋めなければならない項目です。

2. 計算シートのダウンロードと入手方法

ダウンロード先

国土交通省の「特車PRサイト」にある「各種ダウンロード」ページから、「連結最小回転半径計算シート(Excel形式)」をダウンロードします。

アクセス方法:

  1. 特車PRサイトへアクセス
  2. 「申請様式・その他マニュアル等」をクリック
  3. 「連結最小回転半径計算シート[Excel形式]」を選択してダウンロード

ファイルを開く

ダウンロードしたExcelファイルを開くと、計算式が入っていますが、複雑な操作は不要です。水色のセルに必要な数値を入力するだけで、黄色のセルに計算結果が自動的に表示されます。


3. エクセルへの入力項目(6つの項目)

水色のセルに、以下の「6つの項目(5つの数値と1つの選択肢)」を入力します。

① トラクタ軸距(L1)

トラクタ(ヘッド)のホイールベース、つまり前輪中心から後輪中心までの距離です。

  • 入力元: 車検証の「軸距」欄
  • 単位: mm(ミリメートル)
  • 例: 3,710mm → 3710 と入力

② トレーラ軸距(L2)

ここが間違いやすいポイントです。車検証の長さではなく、「キングピン(連結ピン)から、トレーラの後輪(軸群)の中心までの距離」を入力します。

  • 入力元: 車両外観図(図面)
  • 注意: 図面を見て、キングピン位置からタイヤまでの距離を測るか、計算して求めてください
  • 単位: mm(ミリメートル)
  • 例: 7,500mm → 7500 と入力

③ トラクタ前輪輪距の1/2の値(l1)

トラクタの最前軸の「輪距(トレッド/左右タイヤの中心間距離)」を半分にした数値を入力します。

  • 入力元: 主要諸元表または図面
  • 計算: 輪距 ÷ 2
  • 例:
    • 輪距:2,050mm
    • 計算:2,050 ÷ 2 = 1,025mm
    • 入力:1025

④ トレーラ輪距の1/2の値(l2)

トレーラの後軸の「輪距(トレッド)」を半分にした数値を入力します。

  • 入力元: 主要諸元表または図面
  • 計算: 輪距 ÷ 2
  • 例:
    • 輪距:1,850mm
    • 計算:1,850 ÷ 2 = 925mm
    • 入力:925

⑤ トラクタカプラオフセット(S)

ヘッドの後輪中心から、カプラ(連結器)の中心までのズレ幅です。多くのトラクタは、後軸の中心より少し前にカプラが付いています。

  • 入力元: 車両外観図(図面)
  • 単位: mm(ミリメートル)
  • 例: 175mm → 175 と入力

⑥ トレーラ軸数

トレーラの後ろに付いているタイヤの軸数(2軸、3軸など)をプルダウンで選びます。

選択肢:

  • 2軸
  • 3軸
  • 4軸

これを選択することで、計算に必要な係数が自動的にセットされます。

自動計算される項目(入力不要)

以下の項目は、上記を入力するとエクセルが自動的に計算してくれます。自分で入力する必要はありません。

  • DL: トレーラ軸数を選択すると自動的に計算されます
  • Li 及び Lc: 計算過程の数値として自動表示されます
  • R: 最終的な「連結最小回転半径」の結果です

4. 計算結果の確認と単位変換

数値をすべて入力すると、黄色いセルに「R:連結時の最小回転半径」が表示されます。この数値を申請システムに入力しますが、単位の違いに注意が必要です。

単位を「mm」から「cm」へ変換してください

エクセルシートの計算結果をそのまま申請システムに入力してはいけません。エクセルと申請システムでは使用する単位が異なります。

正しい変換方法

エクセルに表示された数値を「cm」に直し、小数点以下を四捨五入して入力してください。

変換手順(例:計算結果が 10548 mm の場合)

ステップ1: cmに換算する

10548 mm ÷ 10 = 1054.8 cm

ステップ2: 四捨五入する

1054.8 cm → 1055 cm

ステップ3: システムに入力

申請システムの入力欄:1055

間違えるとこうなる

もし単位を修正せず「10548」のまま入力してしまうと、システムは「10548cm = 105.48メートル」と解釈します。つまり、「半径100メートルを超える巨大車両」として扱われてしまいます。

これは審査におけるエラーや差戻しの原因となるため、入力前に必ず桁数を確認してください。

変換の早見表

エクセル表示 (mm)変換計算システム入力 (cm)
10548 mm1054.8 cm1055
11280 mm1128.0 cm1128
9850 mm985.0 cm985

5. システムへの入力タイミングと画面位置

計算した数値を「いつ、どこに」入力するかが、初心者には分かりにくいポイントです。ここで明確にしておきましょう。

入力のタイミング

STEP③「車両情報の入力」の中の、「軸種追加」を行った直後です。

具体的には、トラクタとトレーラの組み合わせ(例:3軸トラクタ+2軸トレーラなど)を選択した後、画面の右端に入力欄が現れます。

具体的な場所

「申請車両情報登録メニュー」画面の右端にある「最小回転半径(cm)」という欄に入力します。

注意点

軸種(例:3軸トラクタ+2軸トレーラなど)を選択した後でないと、入力欄が有効になりません。軸種を選択してから、Excelで計算した「cm単位の数値」を入力してください。

6. 12メートルを超えていたら?

計算結果が「12.0m(1200cm)」を超えた場合、少し注意が必要です。

12m以下の場合

一般的制限値(最高限度)の範囲内です。基本的には問題なく申請できます。

12m超の場合

車両制限令における「一般的制限値」を超えるため、「特殊な車両」として扱われます。

具体的な影響

許可自体は降りますが、一般的制限値を超える「超寸法車両」となるため、以下の条件が付きやすくなります。

個別審査の対象になる可能性

一般的制限値(12m)を超えると、自動審査で終わらず、道路管理者による個別の協議(個別審査)が必要になるケースが増え、許可までの期間が長引く可能性があります。

誘導車の配置が必要

半径が大きいと交差点で対向車線にはみ出すため、交差点やカーブ通過時に「誘導車」の配置が条件(C条件・D条件)として付される可能性が高まります。

よく発生するケース:

  • ポールトレーラ
  • 極端に長いトレーラ
  • 重セミトレーラ

12.1mになってしまったら?(数値の微調整)

計算結果が「12.1m」など、ギリギリ12mを超えてしまうことがあります。

この場合、トラクタの「カプラ(連結器)」がスライド可動式であれば、カプラ位置を前方にずらす(オフセット値を大きくする)ことで、計算上の回転半径を小さくできる場合があります。

12m以内に収まると「一般的制限値内」となり、審査期間の短縮や条件の緩和につながるため、可動式カプラの場合は図面を確認してみてください。

7. まとめ:計算完了のチェックリスト

連結最小回転半径の計算が完了したら、以下の項目を確認してください。

  • 国土交通省の計算シートをダウンロードした
  • 6つの入力項目(5つの数値+1つの選択肢)をすべて入力した
  • 計算結果が黄色いセルに表示された
  • 単位を「mm」から「cm」に変換した(÷10)
  • 小数点以下を四捨五入した
  • 桁数を確認した(4桁程度が正常)
  • 12mを超えていないか確認した
  • 申請システムの「最小回転半径(cm)」欄に入力した

よくある質問

Q1. 計算シートが見つかりません。どこにありますか?

A. 国土交通省の「特車PRサイト」→「申請様式・その他マニュアル等」→「連結最小回転半径計算シート[Excel形式]」からダウンロードできます。

Q2. トレーラ軸距(L2)が分かりません。どうすればいいですか?

A. 車検証には載っていません。車両外観図(図面)を確認し、キングピン(連結ピン)からトレーラの後輪中心までの距離を測ってください。図面がない場合は、販売店に問い合わせてください。

Q3. 計算結果が100メートルを超えています。おかしいですか?

A. 単位変換を忘れている可能性があります。エクセルの結果は「mm(ミリメートル)」で表示されますが、システムには「cm(センチメートル)」で入力する必要があります。10で割って入力してください。

Q4. 12mを超えてしまいました。申請できませんか?

A. 申請自体は可能です。ただし、個別審査の対象となる可能性があり、誘導車の配置などの条件が付きやすくなります。可動式カプラの場合は、カプラ位置を調整することで12m以内に収まる場合があります。