解体現場で使う重機を低床トレーラーで回送する場合、重量または高さが一般的制限値を超えるケースが多くあります。アタッチメントを装着した状態の全高・全長・総重量が判定基準になるため、車検証の数値だけで申請不要と判断すると申請漏れが起きます。
廃材のダンプ搬出は別の問題となります。コンクリートガラや金属スクラップは比重が重く、荷台いっぱいに積むと総重量20tをすぐに超えます。バラ積み貨物は分けて運べると判断されるため、特車申請を出しても許可は下りません。積載量の管理が唯一の手段です。
重量超過が発覚した場合、荷主である解体業者にも罰則が及び、2025年6月以降は拘禁刑を含む厳罰化が適用されており、罰則は認知の有無にかかわらず適用されます。
解体業で申請対象になりやすい車種
| 車種 | 申請対象になりやすい理由 |
|---|---|
| 油圧ショベル(標準機) | 輸送時の総重量・高さが制限値を超えるケース |
| ロングアーム・ハイリーチ解体機 | アーム格納状態でも全高が3.8mを超えることがある |
| 大型ニブラー(鉄骨切断機)装着機 | アタッチメント込みの全高・全長・重量が増加 |
| 重機回送用低床トレーラ | 積載状態の全高・総重量・長さが制限値を超える |
| ダンプトラック(廃材・スクラップ積載) | 積載状態の総重量が20tを超えるケース |
地上10〜15階建ての建物を解体するロングフロント機や超大型ニブラー装着機は、輸送状態での全高が4mを超えることもあります。重機の仕様書で輸送状態の全高・全長・総重量を確認し、申請の要否を判断します。
アタッチメント装着状態が申請の判定基準
「外して走るから申請不要」は通らない
油圧ショベルにクラッシャーやグラップルを装着したまま公道を走行する場合、装着状態の全高・全長・総重量が判定基準です。現場間の移動でアタッチメントを外してトレーラに積む運用であっても、装着したまま自走する場合、またはアタッチメント自体を別車両で搬送する場合も申請が必要です。
車検証の数値はアタッチメントなしの本体のみの諸元です。装着状態の全高・全長はメーカーの仕様書または実測で確認し、一般的制限値を超えるかどうかで申請要否を判断します。
アタッチメントを交換した場合の再申請
解体現場によってコンクリートニブラー・鉄骨切断機・グラップルなどを使い分ける場合、装着するアタッチメントによって全高・全長・総重量が変わります。申請は申請時点の諸元で審査されるため、最も大きい(重い・高い)アタッチメントを装着した状態の諸元で申請しておけば、複数のアタッチメントを一つの申請でカバーできます。
変更の結果、申請時の諸元を超える状態になった場合は変更申請と新規申請の使い分けを確認し、変更申請の手続きを取ります。
(重機・鉄骨・プレキャスト等)
諸元で申請する
バラ積みは許可が下りない
積載量を制限値以内に収める
ただし走行中も制限値を
超えないこと
解体業特有の経路問題
市街地の現場は未収録道路が入りやすい
解体現場は住宅密集地や商業地の建替えに多く、現場周辺の区道・市道が経路に含まれます。これらの道路はオンライン申請システムに収録されていない未収録道路になるケースが多く、未収録道路を含む経路は個別審査が必要です。
個別審査の目安は2〜3か月です。工期が2〜3か月しかない案件では、申請開始が遅れると許可が下りる前に工事が終わります。
差戻しを防ぐための付近図
未収録道路を申請する際は、システムへの入力に加えて、進入経路と10桁の交差点番号を記載した付近図のPDF添付が必要です。付近図がない、または交差点番号が抜けていると差戻しになり、審査期間がさらに延びます。短工期の案件では、付近図の準備を申請作業の最初に着手します。
差戻しが発生した場合の修正・再提出の手順は特車申請が差戻しされたら?で確認できます。
工期から逆算して申請を動かす
解体工事の受注が決まった段階で、すぐに重機の輸送経路を仮設定し、未収録道路が含まれるかどうかを確認します。未収録道路が含まれる場合は、着工の3か月前には申請を出します。
住宅解体のような短工期案件(1〜2か月)では、受注から着工までの間に審査が終わらないリスクがあります。頻繁に使う車両の経路はあらかじめ広域で申請しておくと、個別現場ごとの都度申請を減らせます。
経路の終点設定
解体現場の場合、工事完了後に建物が消えるため、申請時点で正確な住所・地番(丁目・番地・号まで)の記載が必要です。番地・号が抜けると差戻しの原因になります。申請前に現場住所を丁目・番地・号まで確認します。
廃材・スクラップ積載時の重量管理
解体現場で発生するコンクリートガラや金属スクラップをダンプトラックで運搬する場合、車検証の最大積載量の範囲内であっても、総重量(車両重量+積載量+乗員重量)が20tを超えれば道路法上の重量超過違反になります。
「20tを超えるなら特車申請を出せばいい」という判断は誤りです。特殊車両通行許可制度は、重機などの分割して運べない単体の貨物のための制度です。廃材やスクラップのようなバラ積み貨物は複数回に分けて運べると判断されるため、申請を出しても許可は下りません。特車申請と過積載の違いも参照してください。
廃材運搬では、積載量をコントロールして総重量を制限値(原則20t、重さ指定道路かつ新規格車の場合は最大25t)以内に収めるしか適法に走る方法はありません。コンクリートガラや金属スクラップは比重が重く、荷台いっぱいに積むと制限値をすぐに超えます。1回ごとに積載量を管理します。
総重量が制限値の2倍(40t)を超えた状態での走行は、即時告発の対象です。
- 油圧ショベル・クレーン等の重機
- 低床トレーラに積んだ重機
- 鉄骨・橋桁(一体物)
- プレキャストコンクリート
- 大型機械・産業設備
- 海上コンテナ(40ft背高等)
- コンクリートガラ・廃材
- 金属スクラップ・廃鉄
- 砂・砂利・砕石・土砂
- 木材チップ・廃木材
- 生コンクリート(ミキサー車)
- 一般廃棄物・産業廃棄物
荷主としての責任と罰則
解体業者も荷主として罰則を受ける
重量超過などの特車違反が確認された場合、運転手・運送会社だけでなく、荷物を出した荷主にも罰則が及びます。廃材を搬出する解体業者は、この荷主に該当します。
国土交通省が実施したWebアンケートによると、荷主への罰則について「聞いたことがない・全く知らない」と回答した荷主が約27%にのぼっています。物流会社やトラックドライバーと比べて最も低い認知度です。罰則は認知の有無にかかわらず適用されます。
罰則の内容
2025年6月以降、道路管理者の命令違反等に対する罰則は「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」に引き上げられています。違反した運転手だけでなく、法人・事業主(荷主含む)も同様に科される対象です。罰則の詳細は特殊車両違反の告発と許可取消にまとめています。
総重量が制限値の2倍(40t)を超えた状態での走行は、警察への即時告発の対象です。
取締りが強化されている背景
全交通量のうちわずか0.3%の重量違反車両が、道路橋の劣化に与える影響の約9割を占めているというデータがあります。国土交通省はこの状況を踏まえ、全国規模での取締りを強化しています。廃材を運ぶ大型ダンプや重機を積んだ低床トレーラーは、取締りの対象になりやすい車種です。詳細は重量違反車両0.3%が橋梁劣化の91.5%を引き起こすメカニズムで確認できます。
まとめ
解体業の特車申請は、重機回送と廃材運搬の2つの場面でリスクが生じます。
重機回送では、アタッチメント装着状態の諸元で申請要否を判断します。車検証の数値はアタッチメントなしの本体のみの値です。市街地の解体現場は未収録道路が経路に入りやすく、個別審査で2〜3か月かかるケースがあります。受注後すぐに経路を確認し、着工3か月前には申請を出します。
廃材・スクラップなどのバラ積み貨物は特車申請で許可が取れません。積載量を調整して総重量を制限値(原則20t)以内に収めることが唯一の適法な方法で、1回ごとの積載量管理が欠かせません。
解体業者自身も荷主として罰則の対象になります。2025年6月以降は拘禁刑を含む厳罰化が適用されており、自社の重量管理体制と申請状況を点検します。
よくある質問
- Qアタッチメントを外した状態でトレーラに積んで走る場合も申請が必要ですか?
- A
トレーラに積んだ状態の全高・全長・総重量が一般的制限値を超える場合は申請が必要です。アタッチメントを外していても、重機本体の重量だけで制限値を超えるケースがあります。
- Q車検証の最大積載量の範囲で積んでいれば問題ないですか?
- A
問題になるケースがあります。道路法の制限値は「総重量(車両重量+積載量+乗員重量)」で判定します。車検証の最大積載量の範囲内でも、総重量が20tを超えれば重量超過違反になります。
- Q廃材を分けて複数回運べば特車申請なしで走れますか?
- A
総重量を制限値以内に収めて走るのであれば申請は不要です。バラ積み貨物の重量超過を特車申請で解決することはできません。
- Q市街地の解体現場への経路申請はどのくらい前に出せばいいですか?
- A
未収録道路が含まれる場合は着工の3か月前が目安です。個別審査に2〜3か月かかるため、受注が決まった段階で経路を確認し、すぐに申請を動かします。
- Q現場が終わったら次の現場にそのまま許可証を使えますか?
- A
使えません。特車申請の許可は申請した経路のみ有効です。現場が変わって経路が変わる場合は新たに申請が必要です。
- Q解体業者が荷主として罰則を受けるのはどんな場合ですか?
- A
重量超過の廃材搬出を指示・依頼した場合が該当します。運転手が違反しても、荷物を出した解体業者が荷主として同様の罰則対象になります。2025年6月以降は拘禁刑を含む厳罰化が適用されています。

