「連行禁止」と「徐行」。特車許可証の条件書でよく目にする言葉ですが、現場ではつい見過ごされがちです。 この2つは日本の道路インフラ、特に「橋」を物理的に守るために設けられた欠かせない仕組みです。 今回は、道路交通法上の定義との違いも踏まえながら、なぜこれほど厳しい制限がかけられているのか、その背景と実務上のポイントを解説します。
「連行禁止」が必要な理由
1. 「連行禁止」とは?なぜ必要なのか
連行禁止とは、単に車間距離を空けることではありません。 正確には、「2台以上の特殊車両が縦列をなして、同時に橋、高架の道路等の同一径間(けいかん)内を通行しないこと」を指します。
なぜ必要なのか?
橋は、橋脚から橋脚までの「1区間(径間)」ごとに耐えられる重さが決まっています。 もし、前の特殊車両がまだその区間にいるのに、後ろの特殊車両が同じ区間に乗ってしまうと、橋にかかる重さが倍増し、設計された限界を超えてしまう恐れがあります。これを防ぐために、物理的に車両を分断するのが「連行禁止」の目的です。

2. 通行条件による「連行禁止」の有無
「徐行と連行禁止は常にセット」と思われがちですが、通行条件(重量)によって義務の内容は異なります。
- 重量B条件の場合: 原則として連行禁止は義務付けられず、「徐行のみ」で通行可能です。B条件の車両は、1台であれば橋への影響が許容範囲内であるため、前後に特車が続いて走ること自体は制限されません。
- 重量C・D条件の場合: 誘導車の配置が必要となるレベルの重量車では、徐行とセットで「連行禁止」が厳しく義務付けられます。
※通行条件の詳細については、「特車申請の通行条件とは」で解説してます。

現場での正しい通行方法
連行禁止が条件となっている箇所(主に橋梁や高架道路)を通行する際は、以下の手順を徹底する必要があります。
クリア確認:
前を走る特車が橋(径間)を完全に渡りきり、対岸の橋脚を通過したことを確認してから自車が進入します。
特殊車両同士のルール:
一般車両との混走は許可されますが(B・C条件)、「許可を要する特殊車両同士」が同じ径間に載ることは禁止されています。
橋脚が見えにくい場合の目安:
夜間など、どこまでが1つの径間か判断しにくい場合は、車間距離を約60メートル以上空けることが国のガイドラインで推奨されています。一般的な橋の径間は概ね60m程度であるため、この距離を保てば安全に通行できます。
誘導車の役割:
重量C・D条件で後ろにつく誘導車は、単についていくだけではありません。後続の一般車が特車に続いて橋に乗らないよう、自ら減速や一時停止を行って「壁」となり、物理的に車間距離(空間)を作り出す役割を担っています。
※誘導車の具体的な配置方法や役割については、「特車申請の誘導車とは」の記事もご参照ください。
さらに厳しい「D条件」の場合:すれ違い禁止
最も条件が厳しい「D条件」が付された場合には、さらに注意が必要です。D条件では、特車同士だけでなく、たとえ一般車両であっても隣の車線(対向車線など)に車両がいる場合は、橋への進入を控えなければなりません。いわば「橋の上のすれ違い禁止」という、非常に厳しい貸切状態が求められます。
実務メモ:D条件は原則「夜間」
重量D条件が付くと、橋の上を「貸切」にするために交通量の少ない時間帯を選ばざるを得ないため、原則として**「夜間(21:00〜6:00)」の通行条件もセットで付与されます。D条件の橋を渡る際は、「徐行」「連行禁止」「すれ違い禁止」「夜間通行」の4つの制約**がかかっていると考えてください。

徐行の定義と義務付けられる理由
条件書にある「徐行」の文字。これは単なる「安全運転」のスローガンではなく、その場所を通るための「絶対条件」です。具体的にどの程度の速度なのか、なぜそこまで厳しく求められるのか、その根拠を整理しました。
「徐行」の正確な定義:数値指定ではなく「直ちに停止できる速度」
特車許可における「徐行」の意味は、道路交通法上の定義をそのまま引用しています。よく現場で「時速〇〇km以下」といった数値基準があると思われがちですが、許可証やハンドブックにおいて具体的な数値指定はありません。
正しい定義:
「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行すること」(道路交通法第2条第1項第20号)
実務上の解釈:
「直ちに停止できる速度」とは、その時の車両重量、路面状況、およびドライバーの反応速度を考慮した上で、「何かあればその瞬間に止まれる速度」を指します。特車のような重量物車の場合、制動距離が長くなるため、現場の状況に合わせて慎重な速度管理が求められます。
重量条件における徐行:橋梁の構造保全
重量に関する通行条件(B、C、D条件)が付された場合、橋梁や高架の道路を通過する際には「徐行」が必須となります。その最大の目的は、橋の寿命を守ること(構造保全)にあります。
衝撃の軽減:
重い車両がスピードを出して走行すると、橋の継ぎ目や段差を通過する際に「衝撃荷重」と呼ばれる大きな負荷が発生します。
ダメージの抑制:
速度を抑えることで、橋への打撃ダメージを減らし、目に見えない劣化(疲労や亀裂)を防ぎます。特に耐荷力の低い橋においては、崩落事故を未然に防ぐための防護策となります。
寸法条件における徐行:交通危険の防止
車両の寸法(幅・長さ・高さ)が大きいことによる徐行条件は、接触事故や衝突を未然に防ぐ「交通の危険防止」を目的としています。
はみ出しと死角への対応:
大型車両がカーブ(屈曲部)や交差点を通行する際、内輪差やオーバーハングによって対向車線にはみ出したり、路肩に接触したりするリスクが高まります。
周囲の安全確認:
巨大な車体ゆえの死角を確実にクリアし、対向車や歩行者との衝突を回避するためには、極低速での走行と慎重な目視確認が不可欠です。寸法に関する条件(B、C条件)は、主に屈曲部、交差点、幅員狭小部、上空障害箇所などで適用されます。

B条件以上は「法的義務」
徐行は努力目標ではなく、通行許可に付された「法的義務」です。
B条件以上での必須適用:
重量・寸法のいずれにおいても、B条件以上の判定が出た場合、指定された箇所での徐行は必須となります。
コンプライアンスの遵守:
許可証に「徐行」と指定されている箇所でこれを怠った場合、許可条件違反(無許可通行と同等の扱い)とみなされ、罰則や指名停止などのペナルティを受けるリスクがあります。
現場に対しては、「重量条件は橋を守るため」「寸法条件は事故を防ぐため」という目的を明確に伝え、単なる速度制限以上の重みがあることを周知することが重要です。
まとめ:道路を守り、安全な運行を継続するための重要ポイント
特殊車両通行許可における「徐行」や「連行禁止」は、日本の道路インフラを保護し、重大な事故を防ぐための具体的な約束事です。実務で特に意識すべき点は以下の通りです。
「徐行」の本質的な定義
数値による時速制限ではなく、道路交通法上の「直ちに停止できる速度」を指します。その瞬間の重量や路面状況を踏まえ、「何かあった瞬間にピタッと止まれるか」を基準に速度を管理する必要があります。
「徐行」が必要な2つの目的
- 重量条件(構造保全): 橋を通過する際の衝撃を抑え、橋の寿命を守るため。
- 寸法条件(事故防止): 内輪差や死角、車体のはみ出しによる接触事故を未然に防ぐため。
「連行禁止」
橋の1つの区切り(径間)に特殊車両を2台同時に載せないための制限です。橋脚が見えにくい場合は、「約60m以上」の車間距離を保つことが、安全な通行の目安となります。
※重量のB条件では原則不要(徐行のみ)ですが、重量C条件以上では必須となります。
B条件以上は「守らなければならない義務」
これらの条件は努力目標ではなく、許可証に記載された「法的義務」です。これを怠ると「許可条件違反」となり、罰則や指名停止などのペナルティに繋がるリスクがあることを、現場へ周知することが重要です。



