クローラクレーンは公道を自走できません。キャタピラ(無限軌道)での公道走行は道路交通法上禁止されており、現場間の移動には低床トレーラへの積載が必要です。そのトレーラ輸送に特車申請が必要になります。
「現場が近いから」「少しの距離だから」という判断での無申請輸送は違反です。クローラクレーンを積んだトレーラは、ほぼ全機種で一般的制限値を超えます。申請の諸元はアタッチメント(ブーム・フックブロックなど)を装着した輸送状態の数値が基準で、車検証の値は使えません。
申請が必要になるケース
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 低床トレーラでの輸送 | 積載状態の総重量・幅・高さ・長さが制限値を超える |
| アタッチメント装着状態での輸送 | ブーム・フックブロック装着時の全高・全長が制限値を超える |
| 分解輸送(複数台) | 車体・ブーム・カウンターウェイトを別トレーラで輸送する場合もトレーラ1台ごとに申請が必要 |
クレーン規模別・申請要否の目安
| クレーン規模 | つり上げ荷重 | 積載時総重量の目安 | 申請の要否 |
|---|---|---|---|
| 小型クローラクレーン | 5〜25t | 20〜40t前後 | ほぼ全機種で必要 |
| 中型クローラクレーン | 50〜100t | 50〜100t前後 | 必要(個別審査が多い) |
| 大型クローラクレーン | 200t〜 | 200t超 | 必要(分解輸送・個別審査) |
同じつり上げ荷重でもメーカー・型式によって重量は変わります。メーカーの仕様書で積載状態の総重量・全高・全長・全幅を確認して判断します。小型クラス(5〜25t)でも積載状態では20tを超える機種が多く、「小さいから申請不要」という判断は誤りです。
現場でよくある誤判断
キャタピラで自走できても公道は走れない
クローラクレーンは現場内であれば自走できます。ただし公道での自走は禁止されており、道路交通法および道路法上も無限軌道車の公道走行は認められていません。キャタピラは路面を大きく損傷するためです。公道の移動は低床トレーラへの積載一択です。
重機輸送でも特車申請は必要
「荷物を運ぶわけではない」という理由で申請不要と判断する現場担当者がいますが、誤りです。クローラクレーンは分割できない単体の貨物として扱われ、積載状態のトレーラが一般的制限値を超えれば申請対象になります。特車申請と過積載の違いもあわせて確認しておきます。
アタッチメントを外した場合の申請要否
ブームやカウンターウェイトを取り外した車体のみの状態で制限値以内に収まれば、そのトレーラの申請は不要です。取り外したアタッチメントを別のトレーラで輸送する場合も、その積載状態が一般的制限値(総重量20tなど)を超えなければ申請は不要です。ただし大型機のカウンターウェイトやブームは単体でも重量・長さが制限値を超えることが多く、その場合はそのトレーラにも別途申請が必要になります。大型機の分解輸送では複数台のトレーラで同時に申請が発生することを前提に計画します。
距離は関係ない
100mでも制限値を超えた状態での公道走行は違反です。「となりの現場だから」という距離感覚での無申請走行は通りません。
申請実務
諸元の確認
申請の寸法・重量はアタッチメントを装着した輸送状態の数値が基準です。車検証の値は車体のみのため使えません。メーカーから輸送状態の仕様書(三面図・重量表)を取り寄せます。
申請システムへの入力で多い誤りが「トレーラの長さ」です。入力する値は車検証やカタログの「全長」ではなく、キングピン(トラクタとの連結部)から積載物を含む最後部までの長さになります。全長をそのまま入力すると実態と異なるサイズになり、差し戻しの原因になります。
| 確認項目 | 確認先 |
|---|---|
| 積載状態の全高 | メーカー仕様書(輸送状態) |
| 積載状態の全長 | メーカー仕様書(輸送状態) |
| 積載状態の全幅 | メーカー仕様書(輸送状態) |
| 積載時の総重量 | クレーン重量+トレーラ重量 |
| 軸重・隣接軸重 | メーカー仕様書または計算 |
トレーラの選定
クローラクレーンの輸送には重量物運搬用セミトレーラ(重セミ)を使います。低床・フラット・多軸など車種があり、クレーンの重量・サイズに応じて選定します。トレーラが変われば諸元も変わるため、申請データはトレーラとの組み合わせ確定後に作成します。諸元入力の手順は重機回送の特車申請で詳しく解説しています。
経路の設定
保管場所から建設現場までの経路を申請します。市街地の建設現場は未収録道路が含まれやすく、その場合は個別審査で審査に2〜3か月かかります。工程が決まった段階で早めに申請します。
大型クローラクレーン(100t超)は超寸法・超重量により個別審査が前提です。工期の6か月前には申請を出します。
通行条件
クローラクレーン輸送は重量・寸法ともに大きく、C条件・D条件が付く経路が多いです。
D条件が付くと工程に夜間輸送を組み込む必要があります。申請前に簡易算定で通行条件を確認し、工程への影響を先に織り込んでおきます。
分解輸送と経路変更の取り扱い
100t超の大型クローラクレーンは車体・ブーム・カウンターウェイト・下部走行体に分解して複数のトレーラで輸送します。トレーラ1台ごとに申請データを作成します。積載する部品の組み合わせが変わるたびに諸元が変わるため、輸送計画が固まった段階で全台の申請を並行して進めます。
クローラクレーンは現場ごとに搬入・搬出の経路が変わります。許可を取得した経路以外は走れないため、新しい現場への輸送のたびに申請または変更申請が必要です。変更と新規の使い分けで手続きを確認しておきます。
ラフタークレーンとの違い
ラフタークレーンは車両自体が公道を走るため、車両の諸元で申請します。クローラクレーンはトレーラに積んだ状態の諸元で申請します。同じ「クレーン」でも申請の基準が異なります。
まとめ
輸送前に確認する手順は3つです。まずメーカーから輸送状態の仕様書を取り寄せ、アタッチメント装着状態の総重量・全高・全長・全幅を確認します。次に使用するトレーラを確定し、組み合わせた状態の諸元を申請データに入力します。最後に経路を確定し、簡易算定で通行条件を確認してから申請を出します。
大型機(100t超)は個別審査が前提のため、工期の6か月前を目安に動き出します。分解輸送の場合はトレーラ台数分の申請を並行して進めます。仕様書の取り寄せや申請データの作成で手が止まる場合は、お気軽にご相談ください。
特車申請の制度・手続き・車種別対応の全体像は特殊車両通行許可申請ガイドで確認できます。
お問い合わせ方法
- お問い合わせフォーム
- 電話:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)
よくある質問
- Q現場内だけで移動させる場合も申請が必要ですか?
- A
公道を通らない現場内の移動であれば不要です。現場の出入口から公道に出た時点で申請が必要になります。
- Qアタッチメントを外した車体のみでトレーラ輸送する場合も申請が必要ですか?
- A
車体のみの積載状態で総重量・全高・全長が制限値以内に収まれば不要です。ただし車体のみでも制限値を超える機種が多いため、仕様書で確認します。取り外したアタッチメントを別トレーラで輸送する場合も、その積載状態が制限値を超えなければ申請は不要です。制限値を超える場合はそのトレーラの申請も別途必要になります。
- Q毎回異なる経路で輸送する場合はどうすればいいですか?
- A
経路ごとに申請が必要です。新しい経路が発生するたびに新規申請または変更申請を出します。変更と新規の使い分けで判断基準を確認できます。
- Q審査期間中に輸送が必要になった場合はどうなりますか?
- A
許可が下りるまで公道での輸送はできません。緊急の場合でも無許可走行は違反です。工程が確定した段階で早めに申請することが唯一の対策になります。
- Q分解輸送で複数台のトレーラを使う場合、申請はどう進めますか?
- A
トレーラ1台ごとに申請データを作成します。積載する部品の組み合わせが変わると諸元も変わるため、輸送計画が固まった段階で全台の申請を並行して進めます。

