特車申請で見落としやすいのが、総重量だけでなく、軸重・輪荷重・隣接軸重にもそれぞれ基準があることです。
総重量が基準内でも、特定の車軸に重量が集中していたり、隣り合う車軸の合計重量が大きかったりすると、通行条件や審査に影響します。
1本の車軸に重量が集中すれば軸重10tの壁に当たりますし、隣り合う2軸の合計が上限を超えれば隣接軸重で引っかかります。特にトラクタ・セミトレーラは、軸距や第五輪荷重によって各軸への重量配分が変わるため、総重量だけを見ていると見落としが起きやすい構造です。
一般的制限値は軸重10t、輪荷重5t。隣接軸重は軸間距離に応じて18t・19t・20tのいずれかになります。それぞれの基準と計算方法を、順番に解説します。
軸重・輪荷重・隣接軸重の違い
3つの違いを先に整理すると、次のようになります。
1本の車軸から道路にかかる重量
1輪から道路にかかる重量
隣り合う2軸の軸重の合計
後2軸がそれぞれ10tだったとします。軸重だけを見ればどちらも基準内です。しかし2軸の間隔が短ければ、「10t+10t=20t」のまま通行できるとは限りません。ここで隣接軸重の制限がかかります。
特車申請の一般的制限値については別記事で解説しています。
軸重の一般的制限値は1軸10t
軸重の一般的制限値は1軸10.0です。1本の車軸を通じて道路にかかる重量のことです。
総重量20tの車両でも、前軸8t・後軸12tなら後軸が10tを超えています。
反対に、総重量を単純に軸数で割って軸重を求めることもできません。各軸にかかる重量は、車両の構造や軸位置、積載物の重量・位置、連結車であれば第五輪荷重などによって変わるためです。
後軸重=総重量÷軸数
このような単純計算では、実際の軸重とずれることがあります。特車申請では、車両自重や乗員、積載物などをもとに各軸への荷重が算定されます。
輪荷重の一般的制限値は1輪5t
輪荷重の一般的制限値は1輪5.0tで1つの車輪から道路にかかる重量です。
軸重10tを左右の車輪に均等に振り分けると、
10t ÷ 2輪=5t
となり、ちょうど基準値に達します。ここで特車申請特有の注意点になるのがダブルタイヤです。
ダブルタイヤは2本で「1輪」
大型トラックの後軸には、左右2本ずつタイヤを組むダブルタイヤがよく使われます。見た目のタイヤは4本でも、特車申請上はダブルタイヤ2本で1輪とカウントします。左右ともダブルタイヤなら、輪数は「4」ではなく「2」です。
ダブルタイヤは、並んだ2本を1輪として扱います。左右がダブルタイヤなら、申請上の輪数は合計2輪です。
「タイヤが4本だから4輪」と数えてしまうと、輪荷重が実態より小さく算定されます。申請データを作る際は、物理的なタイヤ本数と申請上の「輪数」を混同しないよう注意してください。
輪荷重の一般的制限値は1輪5.0tです。 ダブルタイヤは2本で1輪として扱います。なお、条件を満たす認証トラクタの駆動軸には、軸重・輪荷重の特例があります。
隣接軸重は軸距によって18t・19t・20t
軸間が短いほど、道路の狭い範囲に重量が集中します。そのため隣接軸重、つまり隣り合う2本の車軸にかかる軸重の合計にも、別の上限が設けられています。
| 隣接軸距 | 2軸の合計上限 |
|---|---|
| 1.3m未満 | 18.0t |
| 1.3m以上1.8m未満 | 原則18.0t |
| 1.3m以上1.8m未満で、両軸とも9.5t以下 | 19.0t |
| 1.8m以上 | 20.0t |
間違えやすいのが、1.3m以上1.8m未満の区分です。単純に「この軸距なら19t」とはなりません。19tまで認められるのは、隣り合う2軸がそれぞれ9.5t以下の場合だけです。
軸距1.4mなら必ず19tではない
一方の軸重が9.5tを超えている
両方の軸重がそれぞれ9.5t以下
※ 隣接する車軸の軸距が1.3m以上1.8m未満の場合、一般的制限値は18tです。ただし、両方の軸重がそれぞれ9.5t以下の場合は19tまでとなります。
合計が同じ19tでも、各軸の重量によって適用される上限が変わってきます。軸距と各軸の重量をセットで見ましょう。
1.3mちょうどならどうなる?
1.3mちょうどは「1.3m以上」の区分にあたります。両軸がそれぞれ9.5t以下なら、合計19tまでの基準が適用されます。「1.3mなら18t」と一律に扱うものではありません。
軸重・隣接軸重の計算で迷ったら
特車申請は、軸重や隣接軸重、車両諸元など確認項目が多く、手間がかかることがあります。
当事務所では、申請書類の作成から申請後の対応までサポートしています。
特車申請サービスはこちら →車検証の軸重と積車時の軸重は同じではない
車検証には「前前軸重」「前後軸重」「後前軸重」「後後軸重」などが記載されています。ただし、これらをそのまま積載状態の軸重と考えることはできません。
積載物を載せれば、貨物の重量と積載位置によって各軸への荷重が変わります。申請支援システムでも、荷重分布は「自重+乗員」「積載物」「計」に分けて算定されます。
車検証上の最大積載量まで積める車両であっても、その積み方によって軸重・隣接軸重・輪荷重が道路法上の基準を超えることがあります。車検証上の最大積載量と、道路を通行できる重量条件は別に考えるべきポイントです。
隣接軸距は車両諸元表や四面図から見る
隣接軸重を扱うには、隣り合う車軸の距離が必要です。車両によっては車検証だけでは必要な軸間距離がそろわないため、メーカーの車両諸元表や四面図などを使います。申請書類でも、最小隣接軸距は車両四面図等から求める扱いです。
例えば、
- 1,250mm → 1.3m未満
- 1,350mm → 1.3m以上1.8m未満
- 1,800mm → 1.8m以上
となります。1.3m、1.8mの境目では適用される上限が変わるため、概算ではなく車両資料の数値を使ってください。
トラクタ諸元の読み方もあわせて参考にしてください。
トラクタ・トレーラは連結状態で考える
セミトレーラは、トラクタとトレーラを別々に見ただけでは積車時の軸重を把握できません。トレーラ重量の一部は、第五輪を通じてトラクタ側にもかかるためです。積載物の重量や位置が変われば、トレーラ側の軸重だけでなくトラクタの駆動軸重も変わります。
申請支援システムでは、連結状態の車両について最大軸重や隣接軸重などが算定されます。特に重量物を積載するセミトレーラでは、
「トレーラ側の軸重は問題ないが、トラクタの駆動軸が超える」
ということもあるため、連結車全体で確認が必要です。簡易算定も、経路や車両条件を検討する際に利用できます。
包括申請では合成車両の数値に注意
複数のトラクタやトレーラをまとめる包括申請では、「合成車両」が作られます。個々の車両では隣接軸重の基準に収まっていても、包括申請で合成された車両諸元では基準を超える場合があります。
申請支援システムのマニュアルでも、個別車両では条件を満たしていても、合成車両によって隣接軸重の要件を満たさなくなるケースが示されています。この場合は、組み合わせを見直したり、申請を分けたりする対応が必要になります。
特車申請の包括申請については別記事で詳しく解説しています。
認証トラクタの駆動軸は11.5tまで扱える場合がある
軸重の一般的制限値は10tですが、一定のセミトレーラ連結車には例外があります。バン型等セミトレーラ連結車のうち、2軸の認証トラクタの駆動軸については、条件を満たす場合に11.5tまで扱われます。国際海上コンテナ輸送車両についても同様の制度があります。
対象となるのは、エアサスペンションを備えるなど、道路運送車両の保安基準に適合する認証トラクタです。その他の軸は原則10t以下です。
| 軸 | 上限 |
|---|---|
| 一般の軸 | 10.0t |
| 条件を満たす2軸認証トラクタの駆動軸 | 11.5t |
| トレーラ側などその他の軸 | 原則10.0t |
11.5tは「特例8車種ならどの軸でも使える」という制度ではありません。トラクタの駆動軸に限られる点がポイントです。また、対象となる駆動軸では輪荷重についても5.75tの基準が設けられています。
海上コンテナ輸送については、海上コンテナの特車申請で詳しく解説しています。
バラ積み貨物では隣接軸重に注意
土砂や一般貨物など積載量を調整できる貨物は、車両側の許容積載量まで積めるからといって、その重量のまま特車申請できるとは限りません。
特にセミトレーラでは、積載量を増やすことで隣接軸重が18tまたは19tの上限を超えることがあります。
バラ積み貨物は重量を調整できる分、隣接軸重などを一般的制限値まで積載重量を減らすよう求められる場合があります。一方、条件を満たす2軸認証トラクタの駆動軸11.5tの扱いまで一律に除外されるわけではありません。
「バラ積みだからすべて10t」でも「特例車だから重量制限がすべて緩和される」でもない、というのが実際のところです。
積載貨物と特車申請の関係については別記事で整理しています。
軸重で間違えやすいポイント
特車申請では、次のような勘違いが起こりやすくなります。
「10tの軸が2本だから20tまで大丈夫」 隣接軸距が1.8m未満なら、2軸合計には18tまたは19tの制限があります。
「軸距1.3mなら18t」 1.3mちょうどは1.3m以上です。両軸が9.5t以下なら19tの基準が適用されます。
「ダブルタイヤだから4輪」 特車申請では、ダブルタイヤ2本を1輪として扱います。左右ダブルなら2輪です。
「車検証の軸重を見れば積車時も分かる」 貨物を積めば軸重は変化します。積載重量や積載位置を含めて扱います。
「11.5tはトレーラ側にも使える」 11.5tの特例は、条件を満たす2軸認証トラクタの駆動軸が対象です。
このあたりを押さえておくと、軸重や隣接軸重に起因する入力ミスを減らせます。
よくある質問
- 軸重10tの車軸が2本あれば合計20tまで通行できますか?
-
必ずしも20tまでとは限りません。隣接軸距が1.8m未満なら、2軸合計は原則18tです。軸距が1.3m以上1.8m未満で、両軸がそれぞれ9.5t以下なら19tまでとなります。1.8m以上なら20tです。
- 軸距1.4mで2軸合計19tなら問題ありませんか?
-
各軸の重量によります。9.5t+9.5tなら19tの基準に収まりますが、10t+9tの場合は一方が9.5tを超えているため、19tの条件を満たしません。
- 隣接軸距はどこを見れば分かりますか?
-
メーカーの車両諸元表や四面図などを使います。車検証だけでは必要な軸間距離が分からない車両もあります。
- ダブルタイヤの輪数はいくつですか?
-
左右ともダブルタイヤの場合、実際のタイヤは4本ですが、特車申請上は2輪です。左右それぞれのダブルタイヤ2本を1輪として扱います。
- 車検証に記載された軸重をそのまま使えますか?
-
車検証に記載された軸重と、貨物を積載した状態で道路にかかる軸重は同じではありません。積載物の重量や位置によって各軸への荷重が変わるため、積車時の状態で扱います。
- 最大積載量まで積んでも大丈夫ですか?
-
最大積載量の範囲内でも、軸重・隣接軸重・輪荷重の基準を超えることがあります。特に重量物やバラ積み貨物では、積載位置と各軸への重量配分が重要です。
- 11.5tの特例はトレーラ側の軸にも使えますか?
-
原則として使えません。11.5tの対象は、条件を満たす2軸認証トラクタの駆動軸です。その他の軸は原則10t以下となります。
まとめ
軸重の一般的制限値は1軸10t、輪荷重は1輪5t。隣接軸重は軸距によって上限が変わります。
1.3m未満 → 18t 1.3m以上1.8m未満 → 原則18t 両軸9.5t以下なら → 19t 1.8m以上 → 20t
注意したいのは、総重量が基準内でも軸重や隣接軸重で制限値を超えることがある点です。セミトレーラでは、積載重量や積載位置、第五輪荷重によってトラクタ側とトレーラ側の軸重が変わります。車検証の数字だけでなく、公道を走る積載状態で判断してください。
条件を満たす2軸認証トラクタでは、駆動軸を11.5tまで扱える場合がありますが、すべての軸に適用されるわけではありません。
特車申請の制度・手続き・車種別対応は、特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。
申請代行料金:11,000円〜(税込)

