クローラクレーンは、クローラで建設現場内を移動する建設機械です。現場から別の現場へ移動する際は、低床トレーラや重量物運搬用セミトレーラへ積載して輸送するのが一般的です。
特車申請で見るのは、クローラクレーン単体の重量や大きさではありません。実際に公道を走る「トラクタ+トレーラ+積載するクローラクレーン」を一つの輸送状態としてとらえ、幅・長さ・高さ・総重量・軸重などを整理します。
大型機では、ブームやカウンターウェイト、クローラなどを取り外し、複数台の車両に分けて輸送することも少なくありません。その場合は、積載車両ごとに特車申請の要否を判断することになります。
この記事では、クローラクレーンをトレーラで輸送する際の申請要否から、分解輸送、車両諸元、現場までの経路、C・D条件まで順を追って解説します。
クローラクレーンの特車申請は「輸送する状態」で判断する
クローラクレーンは、一般にクローラのまま公道を走って現場間を移動するのではなく、トレーラへ積載して輸送します。そのため特車申請では、クレーン単体の重量や大きさだけで申請要否は決まりません。
けん引する車両の
寸法・重量
荷台・軸数・軸距など
使用車両の諸元
実際に積載する姿勢と
寸法・重量
幅・長さ・高さ
総重量・軸重などを
この状態で判断
道路法上の一般的制限値と照らし合わせる対象は、トラクタ・トレーラ・クローラクレーンを組み合わせた実際の輸送状態です。代表的な一般的制限値は次のとおりです。
| 項目 | 一般的制限値 |
|---|---|
| 幅 | 2.5m |
| 長さ | 12.0m |
| 高さ | 3.8m |
| 総重量 | 20.0t |
| 軸重 | 10.0t |
| 輪荷重 | 5.0t |
| 最小回転半径 | 12.0m |
ただし、高さ指定道路や重さ指定道路などでは別の基準が適用される場合があります。「クローラクレーンを積んでいるから特車」「総重量20tを超えたから必ず特車」と車種名や一つの数字だけで決めるのではなく、実際の積載状態と通行する道路を組み合わせて判断することが欠かせません。
小型クローラクレーンでも特車申請が必要になることがある
クローラクレーンの吊上げ能力と特車申請の要否は、そのまま一致するわけではありません。比較的小型の機体でも、トレーラへ積載すればトラクタ・トレーラ・クレーン本体の重量が合わさります。
総重量が大きくなるほか、クローラ部分が荷台から左右へ張り出して幅2.5mを超えたり、積載後の高さが道路の基準を超えたりすることもあります。
反対に、クレーン本体が大型でも、分解したうえで複数の車両へ分けて輸送すれば、各輸送車両の寸法・重量は変わってきます。判断の軸になるのは、クレーンの吊上げ能力ではなく実際の輸送姿勢です。
大型クローラクレーンでは分解輸送を行う
大型のクローラクレーンを完成状態のまま1台のトレーラへ積載すると、輸送時の重量や寸法が非常に大きくなります。そのため車種や構造に応じてブーム、カウンターウェイト、クローラ、フックブロックなどを取り外し、複数台へ分けて輸送する方法がとられます。
国土交通省の建設工事関係者向け資料でも、クローラクレーンについて吊上げ能力別の分解輸送例が示されています。資料では、輸送する本体側の残存重量を30t以下とする分解の考え方も示されています。実際の分解方法は、機種や構造、メーカー資料に沿って判断します。
重要なのは、「ブームを外したら申請不要」と部品の有無だけで判断しないことです。分解後にトレーラへ積載したクレーン本体は、幅・長さ・高さ・重量を改めてそろえ直します。取り外した部品を運ぶ別の車両についても同様です。
大型クローラクレーンは分解して輸送する
完成状態
クローラクレーン1台のままでは、重量・幅・高さが大きくなりやすい
ブーム・カウンターウェイト・クローラなどを取り外し、複数台の車両へ分けて輸送します。
クレーン本体
重セミ・低床トレーラで輸送
分解後の本体を積載した状態で、幅・長さ・高さ・総重量・軸重を整理します。
ブーム
別のトレーラ・別車両で輸送
長尺物として後方へ張り出すことがあり、長さや通行条件に影響します。
カウンターウェイト
別のトラック・トレーラで輸送
重量が大きいため、総重量だけでなく各軸への荷重配分も重要です。
クローラ・フックブロック等
別の車両で輸送することがある
部品だけの輸送でも、寸法や重量しだいで特車制度が関係することがあります。
申請の考え方
クローラクレーン1台としてまとめて考えるのではなく、各輸送車両ごとに積載状態を整理し、それぞれについて特車申請の要否を判断します。
分解した部品も輸送車両ごとに判断する
たとえば、クレーン本体を1台、ブームを1台、カウンターウェイトを1台で輸送する場合、それぞれ別の積載状態になります。クレーン本体を積んだ重セミが特殊車両に該当しても、ブームを積んだ車両まで同じ条件になるとは限りません。
逆に、部品だけを積んだ車両でも、長尺物が大きく張り出すなどして一般的制限値を超えれば、特車制度が関係してきます。
大型クローラクレーンでは、クレーン1台ではなく「輸送計画全体」を組み立てて考えることが重要です。
トレーラの車検証だけでは申請データは完成しない
申請ではまずトラクタとトレーラの車検証を用意しますが、それだけではクローラクレーンを載せた状態の諸元までは分かりません。クローラクレーンのメーカー仕様書、輸送姿勢図、各部品の重量資料などを組み合わせ、実際に公道を走る状態を組み立てていきます。
特に押さえておきたいのが、積載後の幅・高さ・重量です。クローラ部分が荷台より外側へ出れば積載時の幅が変わり、クレーン本体を荷台へ載せれば荷台高を含めた全高も考える必要があります。
重量についても車両総重量だけでなく、各車軸にどの程度の重量がかかるかを割り出します。軸重・輪荷重・隣接軸重は、それぞれ別の制限値です。
クローラクレーン輸送では重セミを使うことがある
大型のクローラクレーン本体を輸送するときは、荷台の低い低床セミトレーラや重セミが使われることがあります。荷台を低くすることで積載後の高さは抑えやすくなりますが、使用するトレーラによって車両長、軸数、最遠軸距、軸重、総重量は変わってきます。
同じクローラクレーンを運ぶ場合でも、A社の4軸低床トレーラとB社の多軸重セミでは、申請する車両諸元や審査結果が同じになるとは限りません。
そのため、クローラクレーンだけを先に決めて申請を進めるより、実際に使用するトラクタとトレーラまで確定してから諸元を作成するほうが進めやすくなります。
セミトレーラは連結した状態の長さを使う
クローラクレーン輸送では、トラクタとトレーラを連結した状態で寸法を組み立てます。トラクタとトレーラそれぞれの車検証に記載された長さを、単純に足せばよいわけではありません。
連結部分を踏まえ、公道走行時の車両前端から後端までを申請項目に合わせてそろえます。クローラクレーンやブームなどがトレーラの後方へ張り出す場合は、その積載状態も長さに影響してきます。
車検証上のトレーラ全長と、貨物を積んだ状態の申請上の長さは分けて考える必要があります。
現場直前の道路が申請を左右することがある
クローラクレーンの搬入先は建設現場であることが多く、国道や都道府県道だけで経路が完結しないケースも出てきます。幹線道路から市区町村道へ入り、最後は現場入口へ到着する経路です。
この現場直前の道路には、道路情報便覧へ収録されていない未収録道路が含まれることがあります。含まれる場合は、その区間について道路管理者との個別協議が必要になることもあります。
また、重量の大きな車両では橋梁、幅の大きな車両では狭い道路や交差点が通行可否を左右します。出発地から幹線道路までではなく、実際にクローラクレーンを降ろす現場入口まで、経路を一続きに組み立てておくことが欠かせません。
C条件・D条件はクローラクレーンだから付くわけではない
大型のクローラクレーンを重セミで輸送すると、審査結果によって通行条件A〜Dが付くことがあります。
ただし、「クローラクレーンだからC条件」「重セミだからD条件」と車種だけで決まるものではありません。車両の重量・寸法と、実際に通過する橋梁・交差点・道路幅などの組み合わせから条件が決まります。
重量C条件では後方、寸法C条件では前方への誘導車配置が基本です。重量D条件も後方誘導が基本となり、隣接車線についても可能な限り他車との同時通行を避けるなど、より厳しい通行方法が求められます。同じ箇所に重量Cと寸法Cが重なれば、それぞれの条件に応じて前方・後方へ誘導車を配置します。
また、重量D条件や幅の大きな寸法C条件などでは夜間の通行時間帯が指定されることがありますが、C・Dの記号だけで経路全体の通行時間が決まるわけではありません。許可後は、条件書やC・D条件箇所一覧で対象区間を押さえておきます。
ラフタークレーンとは申請する対象が違う
ラフタークレーンも建設現場で使われるクレーンですが、特車申請では考え方が異なります。ラフタークレーンは車両そのものが公道を回送するため、ラフタークレーン自体の幅・長さ・高さ・総重量・軸重などをそろえます。一方でクローラクレーンは、トレーラへ積載して輸送するのが基本です。
ラフタークレーン自体
幅・長さ・高さ・総重量・軸重など
公道回送時に一次分解を行う場合があります。
トラクタ+トレーラ+積載物
連結状態の寸法・総重量・軸重・積載姿勢など
本体・ブーム・カウンターウェイトなどを複数台へ分けて輸送する場合があります。
同じ「クレーンの特車申請」でも、申請データの作り方は大きく異なります。
輸送状態が変わったら許可内容も確認する
工事の途中で、使用するトレーラやクローラクレーンの型式、積載方法、搬入先が変わることがあります。このときは、現在取得している許可の車両・積載物・経路と、新しい輸送状態とを突き合わせます。
既存許可の内容を外れる場合は、変更申請や新たな申請が必要になることがあります。特にクローラクレーンでは、同じ現場でも使用する重セミや積載方法を変えると重量配分や車両寸法が変わってくるため、注意が必要です。
クローラクレーン輸送の申請はこの順番で整理する
クローラクレーンを現場へ輸送するときは、まず使用する機種と輸送姿勢を決めます。次に、取り外すブームやカウンターウェイトなどを洗い出し、クレーン本体と各部品をどの車両へ積むかを決めていきます。
使用するトラクタ・トレーラが確定したら、それぞれの積載状態について寸法・重量をそろえ、現場入口までの通行経路を作成します。最後に、各輸送車両について特車申請の要否を判断し、必要な申請を行います。
大型機ほど、申請書だけを先に作るのではなく、「機種 → 分解 → 輸送車両 → 積載状態 → 経路」の順に決めていくほうが手戻りを減らせます。
よくある質問
- クローラクレーンは公道を自走できますか?
-
クローラクレーンは、一般にクローラのまま公道を走って現場間を移動する機械ではありません。現場間の移動では、トレーラなどへ積載して輸送する方法が基本です。
- 小型のクローラクレーンなら特車申請は不要ですか?
-
機械の大きさだけでは判断できません。トラクタ・トレーラへ積載した状態の幅・長さ・高さ・総重量・軸重などと、実際に通行する道路から判断します。
- ブームを外せば特車申請は不要になりますか?
-
ブームを取り外したことだけで申請不要になるわけではありません。分解後のクレーン本体を載せた車両と、取り外したブームなどを運ぶ車両について、それぞれの積載状態を個別に押さえます。
- トレーラの車検証だけで申請できますか?
-
クローラクレーンを積載する場合は、トラクタ・トレーラの車検証だけでは積載後の状態を把握できないことがあります。クローラクレーンのメーカー仕様書、輸送姿勢図、重量資料などを組み合わせて申請データを組み立てます。
- 同じクローラクレーンなら別のトレーラでも同じ許可を使えますか?
-
使用するトレーラが変われば、車両番号だけでなく車両長、軸数、軸距、重量配分などが変わることがあります。現在の許可内容と実際に使用する車両を突き合わせたうえで判断します。
- 現場が変わったら新しい特車申請が必要ですか?
-
特車許可は通行経路と関係するため、既存の許可に新しい現場までの経路が含まれていなければ、その経路に対応する手続きが必要になります。
まとめ
クローラクレーンの特車申請では、クレーン単体ではなく、トラクタ・トレーラ・クローラクレーンを組み合わせた実際の輸送状態を基準に判断します。
大型機では、ブームやカウンターウェイト、クローラなどを取り外し、複数台へ分けて輸送することがあります。その場合は、積載車両ごとに幅・長さ・高さ・総重量・軸重などをそろえ直す必要があります。
さらに、現場直前の未収録道路、橋梁、狭い道路、交差点によって通行条件が変わることもあります。クローラクレーン輸送では、機種だけを先に押さえるのではなく、分解方法、使用するトレーラ、積載状態、現場までの経路を一つの輸送計画として組み立てることが重要です。
特車申請の制度・車種別対応・経路作成の全体像は、特殊車両通行許可申請ガイドにまとめています。
クローラクレーンの特車申請でお困りならご相談ください
クローラクレーンは、分解方法や使用するトレーラによって申請する寸法・重量が変わり、複数台の申請が必要になることもあります。
当事務所では、車両諸元と輸送状態、現場までの経路をそろえたうえで、特殊車両通行許可の申請代行を行っています。

