高所作業車は、電線工事や道路照明の保守、橋梁点検など、高所での作業に使う車両で、電力・通信・建設・設備管理の各業種で広く使われています。現場への移動は自走か、トレーラに積んで回送するかのどちらかで、特車申請の要否はこの移動方法によって確認する諸元が変わります。自走なら格納状態の車両単体の諸元、積載輸送なら高所作業車を乗せたトレーラの合計諸元が判定基準となります。
車検(道路運送車両法)と特車申請(道路法)は根拠法が異なり、構造が制限値を超えていれば、車検を通っていても申請が必要です。
確認すべき4項目
まず高さ(制限値3.8m)から確認します。作業装置を格納した状態でも全高が3.8mを超える機種があり、作業高さ12m前後以上の機種では格納時に制限値を超えるケースが多くあります。
注意が必要なのは「作業高さ」と「格納時の全高」は別の数値という点です。電気工事・通信工事で使われる屈折ブーム式・垂直昇降式の大型機種はカタログの作業高さだけを見て申請不要と判断しがちですが、格納時の全高は別に確認が必要です。
総重量(制限値20t)は、作業高さ20m超の大型機種で超過するケースがあります。作業高さ10m以下の小型機種は5〜10t程度で収まることが多いですが、同じ作業高さ帯でも機種によって差があるため、車検証の数値で個別に確認します。
見落としやすいのが軸重(制限値10t)です。高所作業車は作業装置の重量が後軸に集中する構造のため、総重量が20t以内でも後軸の軸重が10tを超えることがあります。車検証には前軸・後軸それぞれの軸重が記載されているので、積車状態(作業装置搭載・燃料満タン)の数値を確認します。軸重・輪荷重・隣接軸重は総重量と必ずセットで見る項目です。
幅(制限値2.5m)は、作業装置の構造によっては格納状態でも2.5mを超える機種があります。中古車では改造が施されていると車検証の数値と実態がずれていることがあるため、実測値との照合も必要です。
自走時の諸元確認
車検証の数値を書き出したら、メーカー諸元表と突き合わせて一致を確認します。型式によってはブームの取り付け構造上、車検証の記載より実態がわずかに高くなるケースがあるため、新規導入時はメーカーへの確認を挟むのが確実です。諸元表が手元にない場合は型式をメーカーに伝えれば取り寄せられます。
イチコーポレーション・タダノ・長沢製作所などは型式をウェブのお問い合わせフォームか電話で伝えると案内しています。中古車の場合は、前オーナーから引き継いだ書類一式に諸元表が含まれているか確認します。
最小回転半径も申請書の記載事項で、上限は12.0mです。屈折ブーム式の機種ではブームを格納した状態で車体後部が大きくはみ出すため、交差点を含む経路は旋回軌跡を事前に把握しておきます。
高さ・重量が両方超過する場合
全高が3.8mを超え、かつ総重量や軸重でも制限値を超える場合は、1件の申請で両方を兼ねて対応できます。申請区分が「寸法+重量」の複合超過になり、通行条件は寸法側・重量側それぞれで判定されます。複数の条件が付いた場合は、より厳しい側が適用されます。通行条件A〜DのD条件が付くと夜間走行・誘導車配置が義務になるため、工期への影響は申請前の段階で工程担当者と確認しておきます。
経路の全線が高さ指定道路に指定されており、全高が4.1m以内に収まる機種であれば高さの申請は不要です。ただし1区間でも指定のない道路が含まれると、その区間について申請が必要になります。
車検証の備考欄に「保安基準緩和」の記載がある車両は、特車申請の前に基準緩和認定の取得が必要です。手順の組み立て方は基準緩和認定と特車申請の違いで確認できます。
積載輸送時の諸元確認
高所作業車をトレーラに積んで回送する場合は、積載状態の合計諸元で申請要否を判断します。高所作業車単体では制限値以内でも、トレーラと組み合わせた状態で高さ・重量・長さのいずれかが超過するケースが大半です。
高さは、トレーラの床面高さに高所作業車の全高を足した値が判定基準になります。低床トレーラ(床面高さ80〜100cm程度)に大型機種を積載すると4m前後になることが多く、高さ超過はほぼ前提で考えます。床面高さはトレーラの型式ごとに異なるため、使用するトレーラの実測値で計算します。
総重量は、牽引車を含むトレーラの車両総重量に高所作業車の車両重量を合算した値です。中型以上の機種では合計が20tを超えることがあり、トレーラ側の軸重も別途確認が必要です。
全長については、大型機種では10mクラスのトレーラに積載した時点で合計12mを超えることが多く、長さでも申請対象になります。高所作業車がトレーラからはみ出す場合は制限外積載許可(警察署への申請)の要否も並行して判断します。
申請者はトレーラの運行事業者です。高所作業車の所有者が別会社でも、公道を走行するトレーラを運行する事業者が申請義務を負います。リース車や傭車を使う場合の考え方は特車申請は誰が出す?で整理しています。
申請の流れと審査期間
STEP 1:経路の確定と事前診断 出発地から目的地(現場ゲート前)まで全区間を確定します。高所作業車の回送経路は工事現場の近接道路に未収録道路(市道・農道など)が含まれやすく、路線名の特定に時間がかかります。現場が決まった段階で経路調査を始め、オンライン申請システムの簡易算定で通行条件の見通しを確認してから書類作成に入ります。
STEP 2:申請書類の作成と提出 国道が経路に含まれる場合はオンライン申請システムから提出します。都道府県道・市区町村道のみで完結する経路は自治体窓口または自治体申請システムを使います。詳細な手順は特車申請の流れと審査日数にまとめています。
STEP 3:審査 収録道路のみ・国道を含む経路で新規申請3週間以内が目安です。複数の道路管理者にまたがる経路や橋梁個別審査が発生する区間では2か月以上かかることがあります。工程に申請期間を組み込んでいないと、許可が下りる前に現場入りが必要になります。
| 経路の種類 | 審査期間の目安 |
|---|---|
| 国道のみ(国交省管轄) | 新規3週間以内、更新2週間以内 |
| 複数管理者にまたがる経路 | 1〜2か月以上 |
| 橋梁個別審査が発生する区間 | 2か月以上 |
手数料は、1つの管理者の道路のみで完結する場合は原則無料です。複数管理者にまたがる経路はオンライン申請で1経路あたり200円です。計算方法は特車申請の手数料で整理しています。
許可証の受領後の携行義務・通行条件の運用については特車許可証の携行義務と備え付け書類を参照してください。
まとめ
工期から逆算すると、国道のみの経路でも現場入りの1か月前、複数管理者にまたがる経路では2か月前には申請を出しておく必要があります。経路に未収録道路が含まれるなら、路線名の調査だけで数日かかることを見込んで、現場が決まった段階で動き始めます。
申請の要否判断から書類作成まで一括して依頼したい場合は、下記からご相談ください。建設業全般の特車申請対応は建設業の特車申請もあわせて参照してください。
特車申請の制度・手続き・車種別対応の全体像は特殊車両通行許可申請ガイドで確認できます。
お問い合わせ方法
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- 電話:03-6821-4578(年中無休 9:00〜19:00)
よくある質問
- Q車検証の全高が3.8m以内なら申請は不要ですか?
- A
高さについては申請不要です。ただし総重量・軸重・全幅で制限値を超える場合は申請が必要です。高さだけでなく4項目すべてを確認します。
- Q作業高さ10mの小型機種でも申請が必要なことがありますか?
- A
あります。全高が3.8mを超える機種や、後軸への荷重集中で軸重が10tを超える機種では申請が必要です。作業高さが小さくても型式ごとに諸元が異なるため、車検証の数値で個別に確認します。
- Qトレーラに積んで輸送する場合、申請はどちらが行いますか?
- A
トレーラを運行する事業者です。高所作業車の所有者が別会社でも、公道を走行するトレーラ側の運行事業者が申請義務を負います。
- Q複数の現場を同じ機種で回る場合、現場ごとに申請が必要ですか?
- A
経路が変わる場合は申請が必要です。複数の現場への経路があらかじめ確定しているなら、まとめて包括申請することで手続きの手間を減らせます。
- Q許可期間中に車検を受けた場合、許可は失効しますか?
- A
車検は許可の有効性に影響しません。ただし車検によって車検証の記載事項(重量など)が変更になった場合は、変更申請が必要かどうかを確認します。
